東洋文庫 新猿楽記 (2)

著者の雅楽についての博識ぶりを示す章がある。

[28] 九郎ノ小童ハ、雅楽寮ノ人ノ養子タリ。高麗、大唐、新羅、大和ノ舞楽、尽ク習ヒ畢ンヌ。生年十五ニシテ、既ニ此ノ道ニ達セリ。笙・篳篥・簫・笛・太鼓・鞨鼓・壱・腰鼓・フリ鼓・摺鼓・鉦鼓・銅鈸子等ノ上手ナリ。調子ヲ言ヘバ、雙調・平調・盤渉調・黄鐘調・大食調・壱越調・上調子等ナリ。舞ハ陵王・散手・延喜楽・皇麞・甘州・万歳楽・想夫恋・青海波・壱徳塩・安楽塩・蘇合・狛鉾・弄槍・五常楽・地久・納曾利・埴破・覩曾・胡飲酒・崑崙八仙等ナリ。凡ソ百廿条、尽ク以テ学ビ畢ンヌ。其ノ姿美麗ニシテ、衆人愛敬ス。其ノ貌端正ニシテ、見ル者歓喜ス。中ニ就クニ、叡岳ノ諸僧・辺山ノ行侶、コレヲ見コレヲ聞キテ、或イハ目ヲ迷シ着裳ヲ飛バシ、或イハ肝ヲ砕キテ紙衣ヲ振フト云々。

これについては教訓抄に基づく註釈がなされている。雅楽はこのころ完成の域に達しその後戦乱により散逸して行く。今は宮内庁式部職楽部として保持、存続している。You Tubeでまず平調 越殿楽舞楽 陵王を聴いてみた。

GaN FET パワーアンプ8s (2)

ドライヤーを使用している限り2ヶ月以上無事故なのでGaN FET パワーアンプ8sをメインシステムに組み込んだ。いつドライヤーを止めるかが課題だが儀式の様にやる事にしている。音は素晴らしい。高域は香り高く奥深く、低域はぐーんと伸びて明確で美しい。SITよりもいいしSic MOSよりもいい事が明らかになった。

旧型MOSは周波数特性が良く歪みも少ないのだが内部抵抗が大きいという欠点がある。シングルPPだと低域に不満が出る。Sic MOSは周波数特性はいいが歪みが多い。GaN FETは周波数特性がさらに良く、歪みが無く、内部抵抗もさらに低いといい事ずくめだ。

ゼアミdeワールド

40本録音できたのでSDカードに入れて車などで聴いている。どこでも聴けるようにiPodにも入れた。 カザフ、カルムイクキルギスウズベク、アフガンの音源が入っておりこの中にはバクトリアやワハン回廊のものもあるはずである。この地域に興味のある人は必修のラジオ番組である。

東洋文庫 新猿楽記 藤原明衡(1052)

平安時代の文化が爛熟して崩壊する前夜の庶民の活動の有り様を衛門尉が書き記したという形式で綴られる読み物である。著者は藤原明衡とされている。冒頭の部分の現代語訳を示す。

わたくしは、この二十何年以来、東の京、西の京にわたってずっと見てきているが、今夜の見物ほどすばらしい猿楽の演戯というものは、古今を通じて空前の物であった。中でも咒師猿楽や侏儒の舞い、ささらや鼓笛ではやしたてる田楽の狂騒、傀儡の輩の木偶操り、大陸伝来の奇術・幻術、品玉・八玉の弄玉の類、鼓を糸上に輪転する輪鼓の類、それから田の神相手の独り相撲・独り双六、ぐにゃぐにゃの骨無し芸。ごつごつの骨有り芸。それから、ふにゃふにゃ郡長のへなへな腰、えび漉き舎人の達者な足つき。氷上なにがしが工合がわるくなって逃げ出すときの袴のももだち、山城あねごの大年増ががらにもなく恥ずかしがってさすさし扇。琵琶法師が琵琶を伴奏にして語る物語、千秋万歳の門づけがうたうほがいうた。満腹で腹鼓をうつが胸は鳩胸のあばら骨、かまきり舞でふりたてもげる鎌首のなり。これはしたり、檀家に袈裟の寄進をねだる福徳大尽の上人さま、嬰児のおむつをさがし廻る妙高無類の尼さま。素顔をさしだす刑勾当の内侍さま、笛をわすれて口笛で調子をとるあわて蔵人。神楽猿楽の老楽師のおどけた舞いすがた、男待ち顔に遊女巫女がこってり念入りにお化粧をこらしたご面相。下手なわるじゃれをとばしてたむろするやくざじみたいなせの京童の群、東国のいなかからのお上りさんの赤毛布ぶり。ましてや拍子をとる猿楽の囃子方の男どもの熱狂した様子、その一座を宰領する猿楽法師の手馴れたしぐさ有様、すべて猿楽とよばれる雑伎の芸態、そのばかばかしい言葉のやりとり、全く滑稽の限り、腸もちぎれ、おとがいの骨もはずれんとばかりに笑いこけさせないものはない。

この現代語訳も素晴らしいが当時の光景が眼に浮かぶような描写力は只者ではない。以上は序の一部であるが本文の第一の本の妻 老女 の凄まじいリアリズムの文章は教科書に載せて欲しい気がする。長いのでここでは紹介は出来ないのが残念である。