東洋文庫 島根のすさみ 川路聖謨 (1840)

幕府の旗本である川路聖謨(かわじとしあきら)が佐渡奉行として任地に赴く際に書いた日記風の手紙をまとめたものである。板橋駅から始まる。盛大な送別会の後まるで諸侯の行列のような隊列を組み中仙道を進んで行く。その日は上尾宿に泊まる。翌日は十三里…

東洋文庫 大唐西域記 1 玄奘 (646)

阿耆尼国(カラシャール)から説き始める。ここは今の焉耆(えんき)回族自治県でトルファンの南西にあるオアシスである。広さ、気候、作物、貨幣、風俗、伽藍と僧徒の数について記している。屈支国(クチャ)はさらに広い国で伽藍と僧徒の数も多い。小乗教…

東洋文庫 星亨とその時代 (1984)

本書は国会図書館憲政資料室にある野沢雞一編著「星亨伝記資料」からまとめて東洋文庫2冊分にしたものである。したがっていわゆる伝記本よりも詳細であり関係者の証言集という側面もある。 星亨(1850〜1901)は江戸の生まれ。英学を学び横浜税関長となるが…

東洋文庫 東方見聞録1 マルコ・ポーロ(1298)

第1章では小アルメニアから説き始める。小アルメニア王はタルタル人に服属している。海に面した都市ライアスは貿易の中心地でキプロス島の対岸に位置する。トゥルコマニアはセルジュク族の王国でシヴァス、カッパドキアの辺りに位置する。ラバなどを産して…

東洋文庫 将門記 1 (作者、成立年代不明)

桓武天皇から平の姓を賜り臣籍降下していた平良将の子が平将門である。良将の死後将門は下総国豊田に所領を持ち北関東の治安維持に当たっていた。上手く名を上げれば朝廷の覚えもめでたくなる。ところが女をめぐって叔父たちとの間に確執が生まれた(と書い…

東洋文庫 随筆北京 (1940)

慶応出身の中国文学者奥野信太郎のエッセイである。著者は1936〜38年の間北京に在留し銭稲孫、周作人らと交流する一方グルメを堪能する。事変前の北京は洗練され落ち着いた雰囲気の古都だったという。隆福寺の廟市のにぎわいや琉璃廠の古書街、それに隣接し…

東洋文庫 ハジババの冒険 ジェイムズ・モーリア著(1824)

イスファハンの床屋の子として生まれた主人公のハジババは技能と読み書きを身に付けたのちトルコの商人アガーに助手として雇われる。隊商を組んでホラサーン州のマシュハッドへ向かう途中トルクメン人の盗賊に襲われ主人共々捕虜になる。塩の砂漠と山を越え…

エトルリア ローマ帝国に栄光を奪われた民族 ヴェルナー・ケラー著 坂本明美 訳(1990)

紀元前8世紀頃に今のトスカナ地方に出現し12の都市群を建設、ティレニア海を支配した民族がエトルリア人である。特異な円形の陵墓が作られ多くは盗掘されたが残された墓からおびただしい副葬品が出土した。これらはチェルヴェテリとタルクィニアのエトルリア…

東洋文庫 板橋雑記(はんきょうざっき) 余懐 (1690頃)

明の太祖が首都を金陵(南京)に置き繁栄を極めた頃、城外を流れる秦淮の両岸には娼館が並び画舫(屋形船)が妓女たちを乗せ管弦の調べが流れる中、大夫たちは船遊びに興じていた。だが永楽帝による北京への遷都がなされると南京はだんだん寂れて行く。明末…

東洋文庫 イザベラ・バード 中国奥地紀行 (1899)

序文にはそう書いていないが王立地理学協会会員のバード女史は大英帝国に命ぜられた特殊任務を遂行したのだと思う。 本書では上海から始まって長江を遡り各都市の発展の様子特に宣教師の活動の現況を報告している。大英帝国の中国における権益を常に念頭に置…

吉岡忍 「事件」を見に行く (1988)

新聞記事を元に著者が現地に一人で取材に行き原稿用紙8枚分のルポルタージュにした作品が48本集められて一冊の本になったものである。何気ない三面記事の背後にシュールな現実が広がっているという状況は安部公房の箱男に通じるものがある。記事の一つを紹介…

東洋文庫 江戸繁盛記 寺門静軒著(1832)

病気になった著者は病臥中読書をするがどうにも飽き足らず繁栄した江戸の事物を後世に書き残そうと考えた。以下の記事には今迄の日本には無かった珍しい事物が数多く書かれている。数点の要約を記す。 相撲 江戸においては寛永元年に勧進相撲が行われだんだ…

東洋文庫 幽明録 遊仙窟 他

「遊仙窟」は唐の時代に書かれ遣唐使により日本にもたらされた伝奇小説である。作者は張鷟(ちょうさく)とされている。皇帝の命により黄河源流の僻地に赴任途中の文成が迷い込んだのは神仙窟という館で妖艶な未亡人の十娘と兄嫁の五嫂が文成を接待する。山…

東洋文庫 石田瑞麿 訳 往生要集 (985)

恵心僧都源信の著書である。まず冒頭で八大地獄について詳述している。主に正法念経に拠るもので源信が取材した訳ではない。場所は我々の住む世界の地下数キロ?の処に有ると言う。死んで罪人になるとこれらの地獄に落ちて来ると言う。餓鬼の世界も地下にあ…

リチャード・ロイド・パリー著 黒い迷宮 (2015)

「7年ごとの記録 イギリス 7歳になりました」風に書くと、 ルーシー・ブラックマン 7歳 、1978年生まれ。ケント州、セブンオークス在住。5歳の妹ソフィー、2歳の弟ルパート、父 ティム、母 ジェーンと丘の上にあるローラアシュレイ風の家に住み、丘から見下…

東洋文庫 秋山紀行 (1828)

この書は十返舎一九と親交がある塩沢在住の鈴木牧之が59歳の時、信越国境にある秋山峡を訪れて村落の様子を詳しく記したものである。秋山峡は秘境中の秘境であり平家の落人伝説がある。案内役の桶屋團蔵と共に文政11年(1828年)9月8日塩沢を発ち見玉に至る…

郁達夫 沈淪 (1921)

兄夫婦が政府命令で日本に留学する事になり当時自宅勉強中だった達夫は同行して第一高等学校に入学する。予科の一年を終え兄の勧めで次は医科に三年行くことになる。達夫は美人が多いという名古屋の第八高等学校を選び汽車に乗る。二十才の達夫は車窓から昏…

東洋文庫 慊堂日暦 (1823〜1844)

江戸の儒学者松崎慊堂の書き残した日記であるが今のブログに近いものがある。筆者は若い頃脱藩して江戸の寺に入り昌平黌で学んで儒学者になる。32歳の時掛川藩の藩校の教授に招聘され45歳で隠居する。その後は目黒の山房と江戸を往復しつつ大名邸で講義も行…

東洋文庫 アラビアンナイト別巻 アラジンとアリババ (2)

アラビアンナイトには定本がなくいくつかのアラビア語の写本があるだけでそれには282夜しかない。アラジンもアリババもシンドバッドも後世に付け加えられたものである。 アリババと四十人の盗賊たちの物語 アリババには裕福な家の娘と結婚したカシムという兄…

東洋文庫 アラビアンナイト別巻 アラジンとアリババ

アッラー・ディーンと魔法のランプの物語 アッラー・ディーンは仕立て屋の息子で、父の死後母と貧乏に暮らして居た。アッラー・ディーンは決して良い子では無くろくでなしだった。ある日西方から来た悪いマグリブ人がアッラー・ディーンを見つけ自分は叔父だ…

鈴木傾城 タイでは郷愁が壁を這う (2017)

鈴木傾城氏の自伝的エッセイである。 若い頃の氏はぼんやりと進む道も考えてはいたし周囲から期待もされていたという。初めての海外旅行はタイでカオサン、ヤワラー(チャイナタウン)、クロントイと長期滞在した後日本に帰って来た。すると1年もしないうち…

東洋文庫 F・A・ マッケンジー 朝鮮の悲劇 (1908)

著者の F・A ・マッケンジーはカナダ生まれでロンドン・デイリー・メイル紙の記者として活躍した人物である。本書は著者が東アジア滞在中に開国前の朝鮮から20世紀初頭までの出来事をまとめたものである。朝鮮に対する並々ならぬ関心の高さが伺える。 開国前…

東洋文庫 加波山事件 民権派檄挙の記録 (1900)

この本は明治17年の加波山事件の詳細を綴った私家版で著者は野島幾太郎という栃木在住の民間人である。加波山事件とは河野広体らが当時の藩閥政府、県令三島通庸を憎み国家転覆しようと計画し爆弾を製造したが未遂に終わった事件である。 爆弾係の鯉沼九八郎…

東洋文庫 ジョージ・マカートニー 中国訪問使節日記 (1794)

ジョージ3世治下のイギリスはジョージ・マカートニーを全権大使として乾隆帝治下の清国に送り込む。目的は通商条約締結である。1792年9月21日マカートニー率いる使節団は軍艦ライオン号に乗ってポーツマスを出港する。ベルデ岬諸島、リオデジャネイロ、トリ…

クロサワコウタロウ 珍夜特急 1〜6 (2013)

この本によるとバイクでユーラシア横断を成し遂げる事を思いついたのは著者が19歳の時で達成したのがその3年後である。大学を休学してアルバイトで250万貯めてシティーバンクの口座を作り愛機のXL250Rパリダカを船便で送りカルカッタからポルトガルまで走破…

東洋文庫 山川菊栄 おんな二代の記 (1956)

幕末の水戸藩の恐怖時代をくぐり抜け千世が父の居る東京へと旅立ったのは明治5年6月7日の事だった。その後千世は築地の上田女学校、四谷の報国学舎、御茶ノ水女子師範学校へ進む。卒業後は就職することも無く水戸藩足軽の次男坊の森田竜之介と見合い結婚す…

アルジェの檻 西野雅徳 著 (2012)

本書は山陽製作所のプラント事業部と江藤商事が組んで(コンソーシアム)アルジェリアの鉄鋼公団(SNS)からアルミサッシ製造プラントを受注し現地でプロジェクトを進めている時に起こった事件の記録である。 1984年2月4日午前9時現地の私服警官4名が事務所…

東洋文庫 ナスレッディン・ホジャ物語 トルコの知恵ばなし 護雅夫 訳(1965)

15世紀頃に成立したとされるトルコの小噺集である。イスラム圏に広まった後、フランスをはじめヨーロッパ各国でも出版され人気を博したが日本では護雅夫氏の翻訳が単行本としては初めてである。 ナスレッディン・ホジャという老師のような人物が主人公で、そ…

東洋文庫 宮崎滔天 三十三年の夢 (1902)

巻末にある吉野作造氏の解題を読むと本書の概要が掴みやすい。1870年(明治三年)に熊本で生まれた著者は長兄を西南の役で失い、志を同じくする次兄も横浜で病没、本人は中国革命の実現のためタイで移民と木材の植林を行い資金を得ようとするが頓挫。犬養毅…

東洋文庫 今古奇観 (1640年頃)

編者は蘇州の抱甕老人とされるが詳細は不明。「三言二拍」という長大な説話本から物語四十編を選りぬいた本である。明の時代に成立し清の時代には民衆に広く愛読された。 第一話 三孝廉 漢の時代の三兄弟の出世話である。許武は両親を亡くし二人の幼い弟の面…