大戦略論 ジョン・ルイス・ギャディス(2017)

本書はアメリカ海軍大学校とイェール大学で開講されたプログラムの精髄を一冊の本にまとめたものであるという。その内容は精選された歴史上の戦争を俎上にあげて「ハリネズミとキツネ理論」に基づいて指導者の遂行能力を評価するというものである。例えばペ…

東洋文庫 中国古代の祭礼と歌謡 M.グラネー (1919)

フランス支那学の大家 M.グラネー による大著かつ学位請求論文が本書である。歌謡というのは詩経に収録されている恋愛歌の事で、祭礼とは四つの地方の祭礼について幾つかの文献を元に著述したものである。新進気鋭の学者だけあって緒論では旧来の欧米の研究…

女たちの王国 曹惠虹 (2017)

本書はふつうのルポルタージュとは違いある女性が作家デビューのために書き下ろした作品である。フェミニストを自称する著者はシンガポールで企業弁護士として激務の日々を送り、豪邸にポルシェに三つ星レストランと絵に描いたようなセレブ生活を楽しんでい…

東洋文庫 稿本 自然真営道 (1755)

江戸時代の医師、思想家である安藤昌益が記した書で思想のような医学のような内容がすっきり頭に入ってこない事が書かれている。刊本は三巻であるが出版されなかった稿本は百一巻もあり、再発見分九十二巻は東京大空襲で焼失した。現存しているのは十五巻で…

東洋文庫 中国思想のフランス西漸 (1933)

本書は仏文学研究者である後藤末雄博士がフランスにおける中国研究の歴史についてフランスの文献に当たって取りまとめたものである。そうすると必然的にフランス文テキストに於いて言及された中国の文献にも当たる必要がある。幸い東洋文庫にその多くが所蔵…

東洋文庫 三宝絵 (984)

源為憲(不明〜1011)の著した三巻よりなる仏教説話集である。当時付属していた絵は現存していない。 上巻は見たところインドの古い説話集となっている。話が大袈裟なところがあるし見るべきところは少ない。 中巻には国内の話題が収められている。特に上宮…

東洋文庫 明夷待訪録 (1663)

著者である黄宗羲は明が滅びた時の遺臣であり大学者である。清朝政府が政治を行う様になると郷里に帰り日夜読書に努め書物を執筆し教育を行なった。明夷待訪録はたとえ暗君が君臨する世の中でもいずれは明君が現れ自分に教えを請いにくる事を期して記した政…

東洋文庫 東韃地方紀行 (1811)

本書は1808〜1809年に間宮林蔵が現地人とともに樺太、黒龍江流域を調査・探検した時の口述記録である。 冒頭の部分と途中を抜粋して紹介する。 文化五辰年の秋、再び間宮林蔵一人をして、北蝦夷の奥地に至る事を命ぜられければ、其の年の七月十三日、本蝦夷…

読書をする人だけがたどり着ける場所 (2019)

テレビでおなじみの齋藤孝先生の好著である。流石に非の打ち所のない論調で読書することの効用を説いている。氏は大学一年生にも一般人にも小学生にも関わって有益な言葉を述べている。特に大学生にはリベラルアーツの重要性を説いている。専門バカにはなる…

遠い山なみの光 (2001)

カズオ イシグロ氏の長編処女作、A Pale View of Hills (1981)の日本語訳を読了した。 エディンバラの田舎に住む悦子は戦後英国人の学者と結婚した移民一世である。子育てに失敗しつつあり、悲痛な思いを抱いていると思われるが淡々と過去を回想する。悦子は…

東洋文庫 京都民俗誌 (1933)

本書は京都府立第二中学校歴史科の井上頼寿氏が調べ上げた洛中、洛外の風俗、地誌であり大変貴重な資料である。気になったところを抜き書きして示す。 お産 (略)左京区大原では、藁三百六十五把を縦にくくり、円筒形にして背後に置いてもたれる。正座して…

東洋文庫 続日本紀 (797)

文武元年(697年)8月17日文武天皇が即位しその時の詔 現つ御神として大八嶋国をお治めになる天皇の大命として仰せになる大命を、ここに集まっている皇子たち、王たち、百官の人たち、および天下の公民は皆承れと申しわたす。 高天原にはじまり、遠い先祖の…

ガルシア・マルケス 「東欧」を行く (1957)

コロンビア出身のジャーナリスト兼作家のガルシア・マルケスが仲間と東欧世界に入り込み数編のルポルタージュをものにする。東欧世界とは東ドイツ、チェコスロバキア、ポーランド、ソ連、ハンガリーである。東ドイツではブルジョアは補償金と引き換えに財産…

東洋文庫 源頼朝 山路愛山 (1906)

市井の歴史著述家である山路愛山の「時代代表 日本英雄伝」のうちの第五巻に当たるのが本書である。この企画は日本全史を10人の人物を中心として書こうとするもので、本書では平将門の乱(939)から奥州征伐(1189)までを一気に読むことができる。文章の一…

東洋文庫 韃靼漂流記 (1647頃)

越前国坂井郡三国浦新保村の商人竹内藤右衛門らの松前貿易の船三隻が三国浦を出たのが寛永21年(1644年)4月1日のことである。佐渡島を出発したところ、5月10日からの暴風で船は流され人のいない山ばかりの処へ漂着した。小舟でやってきた現地人らと言葉が通…

2019年若い人に贈る読書のすすめ

今年も若い人に贈る読書のすすめが発表されている。全部アマゾンの書評を読んだうえでこの4冊を注文することにした。但し「世界の終わりの天文台」は「渚にて」に、「大人のにほんご事典」は「読書する人だけがたどり着ける場所」に変えてある。

東洋文庫 中国・朝鮮論 吉野作造 (1904〜1932)

本書は雑誌などに発表された吉野作造の論文集である。吉野作造は袁世凱の子息の家庭教師を勤めた経歴があり清国の内情につとに詳しいところがある。 再び支那人の形式主義(1906) (略) 例えば、直隷袁世凱氏は比較的廉潔公正にして、鋭意進歩改善の功を奏…

東洋文庫 清俗紀聞 1(1799)

本書は長崎奉行中川忠英が部下に命じて長崎に来ている清国商人から聞き取り調査を行なわせ、当時の清の文物、風俗を絵図と短い文章でしるしたものである。幕吏である近藤重蔵らと長崎唐通事を動員して行なわれた。同じく東洋文庫の清嘉録(1830)とは内容と…

ハーバート・ノーマン全集 第1巻

ハーバート・ノーマンはカナダ人宣教師の息子で長野県軽井沢町で生まれ幼少時を過ごした。国に戻るとトロント大学、ケンブリッジ大学、ハーバード大学を卒業、カナダ外務省に入省し外交官として来日しGHQと関わりを持つ。アメリカでの赤狩りが始まり共産主義…

東洋文庫 マテオ・リッチ伝 (1969)

著者の平川祐弘氏は東大教養学部出身の比較文化学者で主に西洋の文献を元にしてこの書を著したと思われる。ここでは全3巻のうち第1巻の要約を記す。 マテオ・リッチは1552年イタリアのマルケ地方に生まれた。巨匠ラファエロ、サン・ピエトロ寺院の設計者ブ…

東洋文庫 塩鉄論 (紀元前1世紀)その2

この部分が聞き覚えのある感じがするので書き留めておく。 御史大夫「書物をひろげ読みおぼえて、死人のことばを口ずさむような文学とは、私たち役人は異なります。文学は牢獄が法廷のうしろにあるのを知っているが、実際の事件を知らないし実際の事件を聞い…

東洋文庫 塩鉄論 (紀元前1世紀)

本書は前漢の昭帝の治世に政府側代表と知識人とで行なわれた議論を著者の桓寛がまとめたものである。冒頭の部分を抜粋する。 文学「(略)ところが今日、郡国で塩・鉄・酒の専売、均輸の制度が行われ、人民と利益を争っているので、人情に厚い素朴な気風が失…

東洋文庫 貞丈雑記1 (18世紀後半)

本書は伊勢貞丈が生涯にわたって著した武家の故実便覧といったものである。伊勢家は小笠原流の二家と並ぶ武家故実家で旗本であり、武家儀礼の下問に答える家柄である。全16巻よりなり貞丈雑記1には1〜4巻が収録されている。以下抜粋。 巻の一 礼法の部 一【…

湿原のアラブ人 ウィルフレッド・セシジャー (1964)

イートン校、オックスフォード大の出身の貴族で王立地理協会会員であり探検家のウィルフレッド・セシジャーはサウジアラビア、クルディスタンを旅した後、とても気に入ったのかイラク南部の湿地帯に長期滞在しこの本を記した。 チグリス川、ユーフラテス川に…

東洋文庫 ゾロアスター教論考 (エミール・バンヴェニスト1926、ゲラルド・ニョリ1985)

本書はコレージュ・ド・フランスでの二つの講義録の日本語訳である。 第一部 『主要なギリシャ語文献に見るペルシア人の宗教』はエミール・バンヴェニストによる1926年の講義で以下の四章からなっている。 第一章 資料全般ーゾロアスターの神話的年代 ギリシ…

東洋文庫 古書通例 (1985)

著者の余嘉錫は1884年湖南省常徳に生まれる。科挙に合格し、北京大学で教鞭をとった後カトリック系の輔仁大学の教授になった人である。この本は副題に中国文献学入門とある様に実際に文献に当たる時の心得や落とし穴について詳述したものである。以下は本文…

東洋文庫 日東壮遊歌 金仁謙(1764)

第11次朝鮮通信使節に書記として随行した金仁謙による随行記で全文ハングルで書かれているのが特徴である。 (1763年9月9日)英祖39年8月3日ソウルを出発。総勢484名、その内、両班は52名である。著者は57歳と高齢ながら宴会を楽しんだり妓生好きの兵房軍官…

東洋文庫 明治日本体験記 (1876)

本書はグリフィス著 「皇国(1876)」の序文と第二部の日本語訳である。 グリフィスは1870年(明治3年)に福井藩のお雇い外国人教師として横浜にやってくる。 横浜の情景 静かな古来の富士から目を移すと日本在住の外国人のにぎやかで新しい町が、日の光をい…

河出書房新社 太平記 山崎正和訳(1370ごろ)

東洋文庫に倣って太平記の現代語訳を読んで見た。東洋文庫3巻分の分量がある。 巻の十一 (前略) 承久からこのかた、北条氏が政権を執って九代、年月はすでに百六十余年に及び、一門は世に栄えて、勢い盛んなあちこちの探題や守護となり、その名を挙げて天…

東洋文庫 七王妃物語 ニザーミー(1200)

著者のニザーミー(1140〜1203諸説あり)はガンジャ(今のキロヴァバード、カスピ海の西)出身で生涯をそこで過ごした。「四つの講話」を書いたサマルカンド出身のニザーミーとは別人である。三人の妻と一人の息子がいる。ニザーミーはあらゆる学問に通じ膨…