東洋文庫 真臘風土記 アンコール期のカンボジア (1300年頃)

著者の周達観は元の使者として1296年に真臘(カンボジア)を訪れ翌年帰国している。これはその時の記録である。真臘と占城は1285年から元 に入貢している。 本文では先ず真臘の場所について船で行く行程が記され、聖天子(成宗)の命により今回の業務が行わ…

東洋文庫 看羊録 (1658)

著者の姜沆は慶長の役で捕虜になり1557年〜1560年の間日本に幽閉されていたが、無事に帰国しこの書を著す。東洋文庫では日東壮遊歌 (1764)、海游録(1719)という江戸時代の日本の事が書かれたものがあるがこれは安土桃山時代と重なる貴重な報告書である。…

東洋文庫 幕末政治家 (1898)

著者の福地源一郎は長崎出身の旗本で維新後は新聞の創刊、翻訳、戯作、小説執筆と多彩に活動し政治家としても活躍した。本書は著作の中の一つで歴史を扱ったものである。老中阿部伊勢守、水戸老公、島津斉彬卿、堀田備中守、井伊直弼、水戸斉昭、安藤対馬守…

東洋文庫 新猿楽記 (2)

著者の雅楽についての博識ぶりを示す章がある。 [28] 九郎ノ小童ハ、雅楽寮ノ人ノ養子タリ。高麗、大唐、新羅、大和ノ舞楽、尽ク習ヒ畢ンヌ。生年十五ニシテ、既ニ此ノ道ニ達セリ。笙・篳篥・簫・笛・太鼓・鞨鼓・壱・腰鼓・フリ鼓・摺鼓・鉦鼓・銅鈸子等…

東洋文庫 新猿楽記 藤原明衡(1052)

平安時代の文化が爛熟して崩壊する前夜の庶民の活動の有り様を衛門尉が書き記したという形式で綴られる読み物である。著者は藤原明衡とされている。冒頭の部分の現代語訳を示す。 わたくしは、この二十何年以来、東の京、西の京にわたってずっと見てきている…

東洋文庫 通俗伊勢物語 (1678)

本書は紀暫計による『伊勢物語ひら言葉(1678)』及び也来による『昔男時世妝(1731)』の二つの本を収録したものである。源氏物語が作り物なのに対し伊勢物語は在原業平の実録であることから人気が高く江戸時代においてもこの様な本がでているのである。 ど…

東洋文庫 十二支考 (2) 南方熊楠 (1923)

本書は十二支に出てくる動物についての伝説や民俗について古今東西の文献から著者である南方熊楠が縦横無尽に語り尽くそうという作品である。 東洋文庫の巻(2)は馬についての伝説から始まる。この話はインドの説話だがパーリ語の本生譚の漢訳である本生経…

東洋文庫 南洋探検実記 (1892)

井上外務卿は日本人殺戮事件の調査の為外務省の職員をマーシャル群島に派遣することにした。その時の辞令である。 御用掛 後藤猛太郎 今般濠斯太剌利亜地方へ派遣申付候事 明治一七年七月二十八日 かくして後藤猛太郎及び本書の著者である鈴木経勲ら一行は、…

渚にて その3

(P.237〜P.320) スコーピオン号は北上するとサンフランシスコの惨状を確認し、無線の謎を解くべくシアトルへ向かう。一名が上陸しサンタマリア島の無線設備を点検すると謎の無線は風とコカコーラの瓶によるいたずらであると判明した。事件としてはシアトル…

渚にて その2

(P.123〜P.237) 科学者オスボーンはピーターを格式の高いクラブに連れて行き退役軍人の大叔父に酒を奢ってもらう。閣下の目下の課題は蔵に眠っている大量の高級ワインをどうやって飲み干すかである。 モイラは艦長に狙いをつける。電話で呼び出しホテルで…

渚にて ネビル・シュート(1957)

SFの名作「渚にて」を読む。要旨を書き留める。T.S.エリオットの意味深なエピグラフもあり本格的な作りである。 (P.1〜P.123) オーストラリアの海軍少佐ピーター・ホームズはある朝眼を覚まし、幸福感に浸りながら今日の予定に想いを巡らしていた。7ヶ月仕…

東洋文庫 松本良順自伝・長与専斎自伝 (1902)

松本良順は江戸時代末期から明治にかけて活躍した蘭方医である。当時は蘭学を学ぶ事は至難であり、やはり多紀楽真院の妨害を受けている。本文には陽だまりの樹を彷彿とさせる様な史実が並んでいる。部分を抜粋する。 (略) 幕府創業の制は、習慣上より、医…

神社に隠された大和朝廷統一の秘密 (2019)

本書は明治学院大学を定年退職した歴史学者・文学博士の武光誠氏による書き下ろし作品である。 概要 紀元220年頃の大和朝廷誕生以前の日本には多くの豪族が並び立っていた。これを外国から見ると小国の君主ということになる。 紀元前10世紀の弥生時代に日…

東洋文庫 大本神諭 火の巻 (1920)

本書は大本教開祖出口ナオの御筆先を出口王仁三郎が編集したものである。御筆先とはいわゆる自動筆記によりひらがなで書かれたもので艮の金神が憑依したとされている。内容は終末論的な内容を含み社会批判、政治批判も見られたため教団は政府により弾圧され…

大戦略論 ジョン・ルイス・ギャディス(2017)

本書はアメリカ海軍大学校とイェール大学で開講されたプログラムの精髄を一冊の本にまとめたものであるという。その内容は精選された歴史上の戦争を俎上にあげて「ハリネズミとキツネ理論」に基づいて指導者の遂行能力を評価するというものである。例えばペ…

東洋文庫 中国古代の祭礼と歌謡 M.グラネー (1919)

フランス支那学の大家 M.グラネー による大著かつ学位請求論文が本書である。歌謡というのは詩経に収録されている恋愛歌の事で、祭礼とは四つの地方の祭礼について幾つかの文献を元に著述したものである。新進気鋭の学者だけあって緒論では旧来の欧米の研究…

女たちの王国 曹惠虹 (2017)

本書はふつうのルポルタージュとは違いある女性が作家デビューのために書き下ろした作品である。フェミニストを自称する著者はシンガポールで企業弁護士として激務の日々を送り、豪邸にポルシェに三つ星レストランと絵に描いたようなセレブ生活を楽しんでい…

東洋文庫 稿本 自然真営道 (1755)

江戸時代の医師、思想家である安藤昌益が記した書で思想のような医学のような内容がすっきり頭に入ってこない事が書かれている。刊本は三巻であるが出版されなかった稿本は百一巻もあり、再発見分九十二巻は東京大空襲で焼失した。現存しているのは十五巻で…

東洋文庫 中国思想のフランス西漸 (1933)

本書は仏文学研究者である後藤末雄博士がフランスにおける中国研究の歴史についてフランスの文献に当たって取りまとめたものである。そうすると必然的にフランス文テキストに於いて言及された中国の文献にも当たる必要がある。幸い東洋文庫にその多くが所蔵…

東洋文庫 三宝絵 (984)

源為憲(不明〜1011)の著した三巻よりなる仏教説話集である。当時付属していた絵は現存していない。 上巻は見たところインドの古い説話集となっている。話が大袈裟なところがあるし見るべきところは少ない。 中巻には国内の話題が収められている。特に上宮…

東洋文庫 明夷待訪録 (1663)

著者である黄宗羲は明が滅びた時の遺臣であり大学者である。清朝政府が政治を行う様になると郷里に帰り日夜読書に努め書物を執筆し教育を行なった。明夷待訪録はたとえ暗君が君臨する世の中でもいずれは明君が現れ自分に教えを請いにくる事を期して記した政…

東洋文庫 東韃地方紀行 (1811)

本書は1808〜1809年に間宮林蔵が現地人とともに樺太、黒龍江流域を調査・探検した時の口述記録である。 冒頭の部分と途中を抜粋して紹介する。 文化五辰年の秋、再び間宮林蔵一人をして、北蝦夷の奥地に至る事を命ぜられければ、其の年の七月十三日、本蝦夷…

読書をする人だけがたどり着ける場所 (2019)

テレビでおなじみの齋藤孝先生の好著である。流石に非の打ち所のない論調で読書することの効用を説いている。氏は大学一年生にも一般人にも小学生にも関わって有益な言葉を述べている。特に大学生にはリベラルアーツの重要性を説いている。専門バカにはなる…

遠い山なみの光 (2001)

カズオ イシグロ氏の長編処女作、A Pale View of Hills (1981)の日本語訳を読了した。 エディンバラの田舎に住む悦子は戦後英国人の学者と結婚した移民一世である。子育てに失敗しつつあり、悲痛な思いを抱いていると思われるが淡々と過去を回想する。悦子は…

東洋文庫 京都民俗誌 (1933)

本書は京都府立第二中学校歴史科の井上頼寿氏が調べ上げた洛中、洛外の風俗、地誌であり大変貴重な資料である。気になったところを抜き書きして示す。 お産 (略)左京区大原では、藁三百六十五把を縦にくくり、円筒形にして背後に置いてもたれる。正座して…

東洋文庫 続日本紀 (797)

文武元年(697年)8月17日文武天皇が即位しその時の詔 現つ御神として大八嶋国をお治めになる天皇の大命として仰せになる大命を、ここに集まっている皇子たち、王たち、百官の人たち、および天下の公民は皆承れと申しわたす。 高天原にはじまり、遠い先祖の…

ガルシア・マルケス 「東欧」を行く (1957)

コロンビア出身のジャーナリスト兼作家のガルシア・マルケスが仲間と東欧世界に入り込み数編のルポルタージュをものにする。東欧世界とは東ドイツ、チェコスロバキア、ポーランド、ソ連、ハンガリーである。東ドイツではブルジョアは補償金と引き換えに財産…

東洋文庫 源頼朝 山路愛山 (1906)

市井の歴史著述家である山路愛山の「時代代表 日本英雄伝」のうちの第五巻に当たるのが本書である。この企画は日本全史を10人の人物を中心として書こうとするもので、本書では平将門の乱(939)から奥州征伐(1189)までを一気に読むことができる。文章の一…

東洋文庫 韃靼漂流記 (1647頃)

越前国坂井郡三国浦新保村の商人竹内藤右衛門らの松前貿易の船三隻が三国浦を出たのが寛永21年(1644年)4月1日のことである。佐渡島を出発したところ、5月10日からの暴風で船は流され人のいない山ばかりの処へ漂着した。小舟でやってきた現地人らと言葉が通…

2019年若い人に贈る読書のすすめ

今年も若い人に贈る読書のすすめが発表されている。全部アマゾンの書評を読んだうえでこの4冊を注文することにした。但し「世界の終わりの天文台」は「渚にて」に、「大人のにほんご事典」は「読書する人だけがたどり着ける場所」に変えてある。