東洋文庫 夢の七十余年 西川亀三自伝 (1949)

本文を読んで行くと西川亀三はとてもスケールの大きい人物という印象を受ける。冒頭文もハイレベルである。少し紹介する。 《京都府(丹波国)天田郡雲原村、これがわたしの揺籃の地である。わたしはここに少年期を過ごし、その後放浪50年の風塵を払ってふた…

東洋文庫 醒睡笑 戦国の笑話 (1628)

本書は京都誓願寺の策伝和尚によって編纂された戦国・桃山時代の笑話の集成である。これにより策伝は落語の祖とも言われている。興味深かったものを一部紹介する。 《巻の三 ある人が小姓の名を、かすなぎと呼んで、使っているので、客が不審に思い、その理…

東洋文庫 長崎海軍伝習所の日々 日本滞在記抄(1860)

本書はオランダ海軍二等尉官リッダー・ホイセン・ファン・カッテンディーケが日記を元に書き下ろしたものである。幕府は海軍創設を急いでいたがそのためにオランダに軍艦建造を依頼し、オランダの勧めで艦船の操縦術の学校を長崎に作った。そこへ第二次教育…

ジャパンナリッジの東洋文庫

4年間市立図書館に通いつめて読んだ東洋文庫も臨時休館により当分は借りれなくなった。なのでジャパンナリッジに申し込んで閲覧する事に。 iPadのSlide Over機能を活用すると、読むのと書くのが同時にできるようになった。大変便利だと思う。料金は消費税込…

東洋文庫 アメリカ彦蔵自伝 1 (1892)

イギリスのテレビ局に倣い「播磨国7歳になりました」風に書く。人は7歳までに作られるという伝の検証である。 彦太郎、1837年に今の兵庫県播磨町に生誕する。幼少時に父が病死し継父に育てられる。この時浜田町に移り寺子屋に通っていた。(後年浜田彦蔵と名…

東洋文庫 名残の夢 蘭医桂川家に生まれて (1941)

本書は桂川家の次女今泉みねが晩年に口述したものを息子夫婦が筆記したもので、エッセイまたは自叙伝といったものである。本文の一部を紹介する。 《そのころ私の家には、いろんな方達が出入りされておられました。家は代々蘭学をいたしておりましたもので、…

東洋文庫 鹿洲公案 清朝地方裁判官の記録 (1730年頃)

本書は広東省の潮陽県の知事代理だった藍鼎元が記録した当時の裁判記録であり、ほぼ実際にあった事という。本文を読んで行くとわかるが、藍鼎元は大した人物であり、書かれている内容は小説以上に面白い。 1 県吏員のストライキ 飢饉と税収不足で軍の兵糧が…

失われた時を求めて (102)

第十二巻に入る。アルベルチーヌがプルーストの顔も見ずに出て行った朝のプルーストの狼狽ぶりを笑って楽しむ所である。以下引用文。(吉川一義訳) 《それでもやはり、今しがた人生から余儀なくされた新たな一大転換のあとで私に課された現実は、物理学の …

東洋文庫 楼蘭 流砂に埋もれた王都 (1931)

本書はスウェーデンの探検家スウェン・ヘディンが発掘した資料をもとにアルバート・ヘルマンが一般向けに書いたものである。発見した歴史的瞬間の記述がある。 《1900年の3月28日に、彼の一行はクルック・タグ南嶺の乾燥した谷間にあるアルトミッシュ・ブラ…

東洋文庫 アブドゥッラー物語 あるマレー人の自伝(1849)

イギリスのTV番組に倣って「マラッカ7歳になりました」方式で書く。人は7歳までに作られるという伝の検証である。 アブドゥッラー・ビン・アブドゥル・カディール1797年生まれ、マラッカ在住。曽祖父はイエメン出身という。父の名はシャイフ・アブドゥッル・…

東洋文庫 蒲寿庚の事蹟 (1923)

これは京都帝国大学教授の桑原隲蔵(くわばら じつぞう)氏による研究書である。蒲寿庚(ほじゅこう)とは宋末期に実在した泉州の市舶使でアラビア人であると推定されている。本論は、一 大食人の通商、二 支那居留の大食商賣、三 広州居留の蒲姓、四 蒲寿庚…

東洋文庫 塵壺 河合継之助日記 (1858)

本書は越後国、長岡藩士である河合継之助が三十三歳の時に記した旅日記である。本文の一部を紹介する。 《安政5年(1858年)6月7日(略) 品川に二艘の異船あり。何れも城のごとき有様、一艘の船、炮発丸、きみ好き事なり。川崎にて昼食を食す。神奈川へ八…

東洋文庫 康熙帝伝 (1697)

本書はフランスのイエズス会士ブーヴェ(1656〜1730)によって著された康熙帝に関する報告書で、ルイ14世に献呈する目的で書かれたものである。その語り口は報告書と言うよりは子供に語り聞かせるようなものに近い。本文の一部を紹介する。 《康熙帝は宝算正…

カンガルーノート (5)

第5章に入る。この辺りからは初期の短編に近い感じになっている。新交通体系研究所という看板を掲げた民家に、変なアメリカ人とトンボ眼鏡が同棲している。そこの空き地に主人公は居候する事になる。民家のそばに踏切があり電車が近づくとRUNの表示が出る仕…

カンガルーノート (4)

しばらく温泉地での話が続くかと思ったら意外にも次の場所に移動する。トンネルから鉄砲水が噴き出してきて主人公はベッドごと流されて行く。着いたところはキャベツ畑、気がつくと満月の夜、三味線を持った老婆が現われる。顔には皺が刻まれていて眼が無い…

カンガルーノート (3)

船が暗渠水路を進むと滝壺に落ち、船はバラバラに壊れベッドだけが河原に乗り上げた。周りの景色は夕暮れか朝焼けの荒涼としたもので、硫黄の匂いが鼻に付く。川は水がきれいで40度の露天温泉となっている。主人公が露天温泉に浸かっていると市の職員が現れ…

東洋文庫 東洋金鶏 (1866〜1868)

本書は幕府の旗本である川路聖謨(かわじとしあきら)がロンドン留学中の嫡孫、川路太郎に書き送った日記である。国内情勢や教訓、日常の雑事が主な内容である。本文より一部を紹介する。 《(1866年11月)廿二日 晴、夜微雨 夜に入り、例の通りお花来る。い…

東洋文庫 魯庵随筆 読書放浪 (1933)

本書は内田魯庵(1868〜1929)の第二随筆集として昭和八年に出版されたものの東洋文庫版である。内田魯庵は小説家、評論家、翻訳家として活躍し、丸善の顧問として「学燈」の編集にも携わったという。内容、文体が分かるよう本文を一部紹介する。 《 西行芭…

東洋文庫 琴棊書画 (1958)

著者の青木正児氏は京都帝大卒出身の中国文学研究者である。本書は当時山口大学教授だった著者が定年退官の頃にまとめられた論考、随想集である。 本編を読んでみて用語の多さと堅苦しさが感じられた。身近な感じのするエッセイを一部だけ紹介する。 《とあ…

東洋文庫 菅江真澄遊覧記 1 (1783年〜晩年)

本書は三河出身の大旅行家、菅江真澄による旅日記である。版本は秋田藩明徳館所蔵の稿本を元に何度か出版されているが、この東洋文庫版は五冊からなり現代文とスケッチ及び詳しい研究解説から成っている。ジャンルとしては民俗学に非常に近いが、つげ義春の…

東洋文庫 魯迅 (1965)

本書は中国文学者、丸山昇による魯迅評伝である。さまざまな文献に基づいて論考がなされているようである。イギリスのドキュメンタリーに倣って「清国7歳になりました」風に書く。 魯迅7歳、浙江省紹興城内在住。祖父は進士であったという。実家は千坪の邸宅…

東洋文庫 六朝詩選俗訓(1774)

本書は六朝時代の俗謡を江戸時代の田中江南が訳し訳注を加えたものである。原詩は宋代の『楽府詩集』全百巻から採られたもののようである。書き下し文と訳を少し紹介する。 梁 子夜四時歌 武帝 春歌 蘭葉 始めて地に満ち 梅花 已に枝に落つ 此の可憐の意を持…

カンガルーノート (2)

次にシュールな笑いが込み上げてくるのは、地下運河をフェリーで行く主人公のベッド上での事である。点滴袋がいつの間にか雄の烏賊に代わっており、迫り来る雌の烏賊と合体し烏賊爆弾となり老舗デパートを爆破するという状況になる。事情は父の遺品にあった…

カンガルーノート (1)

息抜きにカンガルーノートを読んでみる。1991年刊の安部公房の小説である。 新聞記事より 廃駅の構内で死体が発見された。脛にカミソリを当てたらしい傷跡が多数見られ一見ためらい傷を 思わせたが、死因とは認めがたいとのこと。事故と事件の両面から調査を…

東洋文庫 歴代名画記 1 (847)

本書は唐の高級官僚である張彦遠が著した画論・画史の著作であると言う。古代から唐までの画家について述べられている。顧愷之(東晋)、王羲之(東晋)、王維(唐)らの画家が今もその作品が愛され伝えられているが、真筆は戦乱のためすでに消失したと言わ…

東洋文庫 中国の印刷術 1 その発明と西伝 (1925)

著者のT.F.カーターはコロンビア大学の教授で1925年に死去している。本書はT.F.カーターが1921年に山東に向かう汽車の中で着想を得て、その後文献や資料の収集のために世界中を周り、1925年に完成、上梓されたものである。本文の一部を紹介する。 《 紙の発…

東洋文庫 芸苑雑稿 他 岩村透著

著者の岩村透は東京美術学校教授で美術評論家という名士である割にはほとんど知られていない人物である。高階秀爾の方が馴染みがある人が多いのではないだろうか。岩村透はその業績にもかかわらず全集が出版されなかったという経緯があり、代表作数編がこの…

東洋文庫 子育ての書 1 山住正巳 中江和恵 編注

本書は平凡社の宣伝文によると、「日本人の著述のなかから子育てに関する見解を集成し,日本の育児思想の源流をさぐる。」ものであるという。読んでみるとどうやら一般向けの手引書ではなく、研究者向けの本のようである。著者による解題と原文からなってい…

東洋文庫 大日本産業事跡 1 (1891)

解説によると著者の大林雄也は1887年に東京農林学校を卒業したとある。これは新進気鋭の農学士による著書である。 第一章勧農殖産では「農政本論」の著者佐藤信淵の事績や米沢藩の漆栽培の事績等が書かれていて凄い人がいるものだとちょっと驚かされたが、あ…

東洋文庫 神道集 (1360年頃)

解説が興味深いので紹介する。以下引用文。 《神と仏ははやくから習合の傾向を見せていたが、古代末期から鎌倉時代にかけて、本地垂迹思想の流れに沿って、インドの仏は日本の神の本地(前世)であり、日本のあらゆる神は、インドの本地仏がかりにこの世に姿…