東洋文庫 マテオ・リッチ伝 (1969)

著者の平川祐弘氏は東大教養学部出身の比較文化学者で主に西洋の文献を元にしてこの書を著したと思われる。ここでは全3巻のうち第1巻の要約を記す。 マテオ・リッチは1552年イタリアのマルケ地方に生まれた。巨匠ラファエロ、サン・ピエトロ寺院の設計者ブ…

東洋文庫 塩鉄論 (紀元前1世紀)その2

この部分が聞き覚えのある感じがするので書き留めておく。 御史大夫「書物をひろげ読みおぼえて、死人のことばを口ずさむような文学とは、私たち役人は異なります。文学は牢獄が法廷のうしろにあるのを知っているが、実際の事件を知らないし実際の事件を聞い…

東洋文庫 塩鉄論 (紀元前1世紀)

本書は前漢の昭帝の治世に政府側代表と知識人とで行なわれた議論を著者の桓寛がまとめたものである。冒頭の部分を抜粋する。 文学「(略)ところが今日、郡国で塩・鉄・酒の専売、均輸の制度が行われ、人民と利益を争っているので、人情に厚い素朴な気風が失…

東洋文庫 貞丈雑記1 (18世紀後半)

本書は伊勢貞丈が生涯にわたって著した武家の故実便覧といったものである。伊勢家は小笠原流の二家と並ぶ武家故実家で旗本であり、武家儀礼の下問に答える家柄である。全16巻よりなり貞丈雑記1には1〜4巻が収録されている。以下抜粋。 巻の一 礼法の部 一【…

湿原のアラブ人 ウィルフレッド・セシジャー (1964)

イートン校、オックスフォード大の出身の貴族で王立地理協会会員であり探検家のウィルフレッド・セシジャーはサウジアラビア、クルディスタンを旅した後、とても気に入ったのかイラク南部の湿地帯に長期滞在しこの本を記した。 チグリス川、ユーフラテス川に…

東洋文庫 ゾロアスター教論考 (エミール・バンヴェニスト1926、ゲラルド・ニョリ1985)

本書はコレージュ・ド・フランスでの二つの講義録の日本語訳である。 第一部 『主要なギリシャ語文献に見るペルシア人の宗教』はエミール・バンヴェニストによる1926年の講義で以下の四章からなっている。 第一章 資料全般ーゾロアスターの神話的年代 ギリシ…

東洋文庫 古書通例 (1985)

著者の余嘉錫は1884年湖南省常徳に生まれる。科挙に合格し、北京大学で教鞭をとった後カトリック系の輔仁大学の教授になった人である。この本は副題に中国文献学入門とある様に実際に文献に当たる時の心得や落とし穴について詳述したものである。以下は本文…

東洋文庫 日東壮遊歌 金仁謙(1764)

第11次朝鮮通信使節に書記として随行した金仁謙による随行記で全文ハングルで書かれているのが特徴である。 (1763年9月9日)英祖39年8月3日ソウルを出発。総勢484名、その内、両班は52名である。著者は57歳と高齢ながら宴会を楽しんだり妓生好きの兵房軍官…

東洋文庫 明治日本体験記 (1876)

本書はグリフィス著 「皇国(1876)」の序文と第二部の日本語訳である。 グリフィスは1870年(明治3年)に福井藩のお雇い外国人教師として横浜にやってくる。 横浜の情景 静かな古来の富士から目を移すと日本在住の外国人のにぎやかで新しい町が、日の光をい…

河出書房新社 太平記 山崎正和訳(1370ごろ)

東洋文庫に倣って太平記の現代語訳を読んで見た。東洋文庫3巻分の分量がある。 巻の十一 (前略) 承久からこのかた、北条氏が政権を執って九代、年月はすでに百六十余年に及び、一門は世に栄えて、勢い盛んなあちこちの探題や守護となり、その名を挙げて天…

東洋文庫 七王妃物語 ニザーミー(1200)

著者のニザーミー(1140〜1203諸説あり)はガンジャ(今のキロヴァバード、カスピ海の西)出身で生涯をそこで過ごした。「四つの講話」を書いたサマルカンド出身のニザーミーとは別人である。三人の妻と一人の息子がいる。ニザーミーはあらゆる学問に通じ膨…

東洋文庫 朝鮮小説史 (1939)

著者の金台俊は京城帝国大学朝鮮語学科を卒業、後に地下活動に参加し延安に脱出した。朝鮮独立後は反米闘争を行い李承晩政権によって処刑されている。 上古時代においては文学と言えるものは存在しない。三国時代に書かれたとされる金大問「鶏林雑編」、「花…

東洋文庫 ハーフィズ詩集 (14世紀)

ペルシャ文学における最高の詩人は民族英雄叙事詩ではフィルドスウィー、四行詩ではオマル・ハイヤーム、頌詩ではアンヴァリー、ロマンス叙事詩ではニザーミー、神秘主義詩はルーミー、実践道徳詩はサアーディー、抒情詩はハーフィズと言われている。今回紹…

東洋文庫 則天武后 郭沫若 (1962)

郭沫若の書いた全4幕ものの史劇である。通説とは真逆を行くもののようである。以下概要を記す。 すでに権力を手にしていた則天武后は病弱な夫である高宗と第二子である太子賢と洛陽の宮殿に住んでいた。門閥を排し人材を登用し民衆の声を聞く政治を行ってい…

りんごの木の下であなたを産もうと決めた 重信房子 (2001)

1971年3月1日家族を捨てベイルートに到着した著者は、緊迫した中東の情勢を肌で感じていた。前年のPFLP(パレスチナ解放人民戦線)による革命飛行場作戦、それに対するヨルダン政府による弾圧(ブラックセプテンバー)が起こり、国王親衛隊による右手狩りも…

東洋文庫 ペルシア逸話集 (11、12世紀)

本書はペルシア逸話集と題されているが「カーブースの書」と「四つの講話」からなっている。 カーブースの書 これはカスピ海南岸地域に成立したズィーヤール朝(927〜1090頃)第7代王カイ・カーウースが息子ギーラーン・シャーのために著わした教訓の書であ…

東洋文庫 鸚鵡七十話 印度風流譚 (7〜12世紀)

ハラダッタの息子マダナセーラとクヌダーコーシャの美しい娘プラヴァーヴァーティーが夫婦になり愛欲の限りを尽くしていた。周りが見兼ねて忠告するとマダナセーラは商売をするため旅立つことにした。残されたプラヴァーヴァーティーの悲しみを癒すように鸚…

東洋文庫 パンソリ 申在孝 (1870年ごろ)

本書は民衆の芸能であるパンソリを 申在孝が脚色、筆録したものの日本語訳である。四つの演目が収録されているが冒頭にある「春香歌」の内容はこんなものである。 湖南左道の南原府に妓生の娘として生を受けた春香は絶世の美女であった。府使の令息である若…

東洋文庫 薔薇園 サアディー 著 (1258)

この書はシラーズ出身の天才詩人サアディーが書いた散文と詩による道徳の教えである。読んで行くと商売上手なアラブ人の事を敵視しているのが窺える。 第3章 物語15 私はある砂漠のアラブ人がバスラの宝石商らの仲間に加わり、こう語っているのを見た。「砂…

石原家の人々 石原良純著 (2001)

石原家次男の著者による回想的ルポルタージュである。家長たる石原慎太郎と妻典子、4人の子供達が逗子の入り江を見下ろす豪邸で繰り広げる緊張した生活と成城に住む叔父裕次郎との交流を中心に描かれている。著者は次男の立場で物を見たり経験したりしており…

世界史を知るには

東洋文庫を全部読むことが近道である。 毎週一冊を無理矢理に読んで梗概を書くことにしている。一年で50、十年で500である。

東洋文庫 法顕伝(4世紀)・宋雲行紀(6世紀)

東晋時代の僧である法顕は399年慧景、道整、彗応、慧嵬らとともに長安を旅立った。天竺に律蔵を求める旅である。隴山を越え、乾帰国で夏坐(3ヶ月の坐禅)しさらに進み張掖鎮に至る。そこでも夏坐し敦煌に至る。ここには大きな防御設備(辺塞)がある。一と…

東洋文庫 日本霊異記 (800年ごろ)

平城京の薬師寺僧侶、景戒の記した説話集で話には奈良時代以前及び奈良時代の人物が登場する。雄略天皇と雷(いかづち)の有名な話「雷を捕らえた栖軽の墓」が上巻第一に出てくる。上巻第四には聖徳太子の有名な逸話が出てくる。上巻第二十八には役小角(え…

東洋文庫 木葉衣 他 行智 (1800年ごろ)

これは修験道の教本であり、著者の行智は修験道の開祖である役小角(えんのおづぬ)について『続日本紀』『扶桑略記』『日本霊異記』を引用して述べている。なかなかの博識と言えるだろう。修験道は葛城山の山道の往還から始まった。『古事記』『日本記』『…

東洋文庫 羅生門の鬼 島津久基 (1929)

本書は島津久基博士による民話・伝説の論考集で昭和4年に新潮社から出版されたものである。標題の羅生門の鬼には力が入っていて特に詳しく述べられているがさらっと書かれたものもある。 トッカッピ 何とか薬の宣伝なぞと早合点してはいけない。トッカッピと…

好きなことだけして生きていく

参ったなあ。この手の本はこんなにある。 好きなことだけして生きていけ 千田 琢哉(2013) 「好きなこと」だけして生きていく。 心屋 仁之助(2014) 好きなことだけして生きる PHP研究所(2015) 好きなことだけで生きる~フランス人の後悔しない年齢の重ね方 …

東洋文庫 水滸後伝 陳忱 (1664)

水滸伝の結末は108人のうち生き残ったのが36人、首領の宋江も毒殺されるという陰惨なものだったがこの水滸後伝はその続編である。まず阮小七が登場し漁師として暮らしを立てていたがある日役人の張通判にいちゃもんをつけられる。が、そこは怪力無双の阮小七…

「好きなことだけやって生きて行く」という提案 角田陽一郎著 (2017)

生放送なら歴史の真実を垣間見れると思い平昌オリンピック、ワールドカップ、24時間テレビを録画しつつ検証している。ああこうなのかと思うことが結構写りこんでいるものだ。録画放送では大抵編集されている。今回日テレの24時間テレビで興味深い発言を放送…

東洋文庫 ベニョフスキー航海記 (1790)

ベニョフスキーは1746年に西スロヴァキアにあるヴェノヴォという村で生まれたハンガリー人である。1768年ロシアとポーランドの間に戦争がおこるとベニョフスキーはポーランド側に付き敗北する。1769年ロシア軍に捕らえられたベニョフスキーはカザンに送られ…

わたくしが旅から学んだ事 兼高かおる (2010)

「兼高かおる世界の旅」はTBS系列で31年間続いた長寿番組で著者はその看板となる中心人物である。31年間世界を見て回っただけあって考えの行き着くところが明快である。本書には著者の受けた教育、仕事の流儀、人生と仕事について書かれている。 著者は日本…