田中隆尚 へらす巡歴 (1976)

  単行本もあるが田中隆尚撰集(10)に拠った。昭和44年4月11日著者はイタリアから海路ギリシャに入る。ここはもうイオニア海だ。明け方コルフ島にさしかかる。

> 6時に甲板にのぼると、はからずも船はせまい水道をとほって
>いる。しぎに思って船員に聞くと、右がははケルキュラ(コ
>ルフ島)で、ケルキュラとバルカン半島との間のせまい水道に
>さしかかったのであった。ケルキュラ島には岩層からなる山の
>峰がくえ、そこに日の光がてりがげってゐる。

     コルフ島はアンドレア・ドーリアがトルコ軍を待ち伏せした場所だ。その頃はヴェネチア共和国の城砦があった。著者は二本の塔と城跡を見つけているが余り関心がなさそうだった。その頃はまだ塩野
七生の本は無かったのだ。