映画 霧の中の風景 (1988)

   ドイツ行き国際列車に少女と幼い弟が乗ろうとする。事情は不明だが毎晩乗りに来ては乗らずに帰って行く。オープニングのテーマ音楽にオーボエ協奏曲を用意するくらい気合いが 入っているようだ。二人は母子家庭で父がドイツにいると聞かされている。この時点でこの二人は父が会いに来るまではじっとしていて自分たちのすべきことをすべきなのにと思える。よっぽどギリシャが嫌でドイツに憧れているなら同情も出来るが。ある日とうとう列車に乗ってしまった。隠れもせず通路で寝ていると車掌がやって来て切符を見せろという。たちまち次の駅で降ろされた。あとは面倒なトラブル処理である。駅員がどこから来たか聞くが黙っている。駆け引きがひどい。結局タクシーで伯父の職場に送ってもらっている。伯父は駅員に真相を話し二人の受け取りを拒否する。移送の途中にハプニングがあり二人は逃げ出し再び列車に乗る。途中でいろいろと象徴的な出来事を眼にする。が今度は町から町へ歩いている。山道で会った青年にオンボロバスに乗せてもらう。町に着き少年に自慢のオートバイを見せていると大人の集団が歩いてくる。集団は先に来ていた劇団員でこの町には劇場が無いと言う。青年はオートバイに乗り何処かに走って行った。少年は町をさまようが身なりはみすぼらしく無い。店に入りサンドイッチを無心する。10歳くらいだろうか。サンドイッチが食べたいなら店の片付けをしろと言われる。バイオリン弾きが現れて弾き始めるが店主に追い出される。広場では軍隊が行進の訓練をしている。二人はその日はバスの中で寝た。朝になると劇団員が稽古をしている。羊飼いの少女ゴルフォという詩劇らしい。今日も劇場が取れなかったらしい。海辺の空き地を劇団員が歩いて行く。奇妙なことにみなシニア世代だ。姉弟は霧雨の中を歩いて行くがトラックに乗せてもらい次の町へ行く。運転手はレストランで夕飯をおごってくれる。このレストランは売春もあるらしく女をめぐって喧嘩になりそうになるがならない。夜通し走って海辺の空き地で運転手は仮眠を取る。運転手は少女を荷台に連れ込んで欲望を処理しようとするが少女は抵抗しなかったようだ。14歳くらいではないだろうか。ギリシャも治安が悪い。その後も列車にただ乗りして旅を続ける。物思いに沈む少女。列車は止められ警察が調べに来る。姉弟は逃げるがオートバイの青年に偶然出くわす。オートバイに乗せてもらいどこかの海岸まで行く。青年は徴兵の為テッサロニキへ行くという。お金を出してもらったのか姉弟はアテネから堂々と国際列車でドイツ行くことができそうだ。夜の列車の時間まで青年と過ごすことになる。劇団は解散するらしい。
明け方青年は海に浮かぶ手のオブジェとヘリコプターを見る。姉弟もホテルに泊まっていたが一緒にヘリコプターが手を吊り上げるのを見る。ヘリコプターはアテネの海岸を去っていった。空き地の広場には若者たちが自慢のオートバイに乗り集結していた。ブームなのだろう。青年はここでオートバイを売ったので青空市場かもしれない。夜のクラブではドアーズのようなロックが流れ大勢の若者が楽しんでいる。青年はここで何かしようとしている。一夜の相手を見つけるつもりかも知れない。気配を察した少女はブチ切れて黙って去って行くが最後は追ってきた青年に抱きついて泣いた。田舎の駅で少女がお金が足りないとつぶやく。ギリシャの兵隊さんに声を掛けて385ドラクマで体を売ろうとする。真面目で気が弱そうな兵隊さんは随分迷うような仕草を見せるが列車の陰に少女を誘う。やろうとしたが兵隊さんは苦笑いして金を置いて去っていった。姉弟は車窓の人になりにっこり笑うが今度はパスポートを見せなければならない。闇夜に紛れて逃げ出した姉弟は国境の川をボートで渡る。この時に姉弟は死んだようだ。あの銃声、二人の前に現れた白い霧の世界を考えると。