映画 トラブゾン狂騒曲〜小さな村の大きなゴミ騒動〜 (2012)

   映画とは言っても5年かけて撮られたドキュメンタリーだ。ゴミ処理場が海岸から7kmの内陸部に作られトラブゾンの住人が抗議行動を起こしている。汚水が漏れ出して川から腐臭がするという。レポーターに農民が不満をぶちまける。空撮映像も出てくるがトラブゾンは緑に覆われた暮らしやすそうな所だ。トラブゾン環境森林局のコメントでは長年家庭ゴミが自治体によって海岸に捨てられていたという。そこでゴミ処理場を候補地から選び作ったのだった。 

  
   事の始まりは1985年にこの地域に銅山が発見され掘り尽くされる。そこに露天掘りの跡が残った。雨の多い地域なのでここをゴミ処理場にすると水がたまり汚水が溢れ出し大変なことになる。とそれに気づいた市長は計画を止めようとするが、逆に政府から告訴される。これは市長側が勝ったようだ。すぐさまラク酒で祝杯をあげる。そのときの歌謡で俺たちはチャンブルヌからやって来たと歌っている。別に意味は無いようだ。ここはチャンブルヌ町なのだ。フェスティバルで歌姫が登場し歌い出す。ダンプが登場し砂利を跡地に入れ始める。トルコでは係争中の案件を裁判所が差し止められないらしい。2007年9月より処理場は操業を開始した。責任者が語る。ゴミから出てきた水は汚水処理されて流されるという。住民たちは第一回目のゴミからは死体の臭いがしたという。その臭いは海まで届いたという。
 
    住民たちが担当者に抗議している。知事が視察に登場。メルセデスSクラスが見える。水が漏れ出している現場で技術者の説明を聞く。その後ゴミの搬入を中止してシートの補修をしているらしい。子供達も反対運動に参加、シュプレヒコールを行う。案の定雨のせいで処理前の汚水がタンクから溢れ出した。川に向かって流れてゆく。海岸で子供が海水浴を楽しむ。ゴミが浮かんでいる。獲った魚や収穫したトウモロコシが映し出される。集会所では男らがトランプ、バックギャモンを楽しむ。政治談義が始まる。エドリアン首相派対共和人民党という構図のようだ。
 
    ゴミには医療廃棄物、動物の骨もある。空にはカラスが舞う。犬が何かを咥えて歩いて行く。500頭いるらしい。女たちは茶を収穫し運ぶのは男だがこの村の男は怠けているらしい。怠ける権利があるのだという。鳥の糞で茶が駄目になっている。製茶工場の責任者は茶の収穫に影響ないという。 2009年現在24万トンのゴミがありメタンガスも出るという。人口流出がひどいらしい。チャンブルヌの人口が2000人を下回り議会存続の危機にあるという。雨が降り流れる川の水は泡立っている。山には霧がかかっている。春が来て雪が溶ける。この土地は鉱山会社が売り出したときに祖父が買ったという。目の前に家がある住人の言葉だ。これに関しては明らかに法律違反だが当局は建設の時に目を瞑ったという。  
 
   処理しきれない汚水を海に流す時は大型タンクローリーで運び深海投棄システムで捨てる。とは言え海面は濁っている。業者の男を住民が問い詰める。住民が道路の通行を妨害し環境省の役人が登場。能弁の男が被害をまくしたてる。環境省の見解では地下水までの汚染はないだろうと言う。コーランの声が流れる中、多数の鳥が空を埋め尽くすという禍々しい映像が流れる。いよいよ処理場の手前に壁を作る。処理場は3年後には閉鎖するという。工事の映像が出る。ところが工事の振動でタンクが破裂。壁が決壊し汚水がぶちまけられた。土石流状態の下流域。知事と市長が視察に訪れる。ここに住む老人の家庭の食卓が映される。フランスバンに煮魚。老人は村を離れないという。妻は離れたいようだが。この事故によって村を捨てる人が増加。孫たちも大学卒業後はここへは戻らないという。法廷闘争も終結を迎え市長側がほとんど敗訴した。これで映画は終わり。
 
   バッドエンドだが映画としては風景もいいし生で出てくる音楽もなかなかいいなと思った。