映画 卵 (2007)

     主人公のユスフの古本屋。もう夜だが店は開いている。突然実家から電話があり急に帰る事になった。シャッターを閉め車のエンジンをかける。河岸段丘っぽい所を走り抜け朝方ティレ郊外の村に着く。ユスフは髭を生やしたいい男だ。家は葬儀の最中だった。お悔やみを言われ遺体のベッドの横に座る。誰が死んだのかがわからないがどうやら母親のようだ。葬列が墓地へと向かう。埋めた後の土盛りに水をかけタバコをくゆらすユスフ。そのまま立ち去ってゆく。森の中で昼寝をする。ウズラの卵を落として割る夢を見る。

     街でユスフは床屋に入り髪を整える。髭もスターリン風になった。実家に戻ると女が台所で家事をしている。ユスフを見てお茶をいれてくれる。近所の差し入れの食事をとる。女は母の世話をしていたアイラで親戚の消息をいろいろ教えてくれた。ユスフは母の希望だった羊の生贄を嫌がり先延ばしにした。翌朝ミルク売りが羊のミルクを売りに来る。孤児の少年が朝食にやってくる。朝ごはん用の卵を取りにゆくが少年は無いという。ユスフも確認する。

    ティレの町で相続の手続きをする。その後ユスフは倒れこむ。てんかん発作らしい。アイラと彼氏が将来について話し合う。アイラはイスタンブールイズミルの大学に進学するらしい。森の中。
ユスフが涸れ井戸に落ちている。登れそうに無い。これは夢だった。町で旧友に逢う。居残り組は少ないようだ。昔の恋人ギュルが離婚して戻っているという。ユスフは車でギュルの家に行く。超絶美人だ。タバコを吸いながらポツリポツリと話す。アンカラが嫌になって戻ったという。でもここも嫌なようだ。ユスフは詩集を出版しギュルにも贈っていた。

   夜アイラと話していると停電した。ユスフはヒューズを買いに電気店へ行く。電気屋に見てもらうとケーブルの焼損だった。ユスフはいろいろと話しかける。電気屋は何か思う所があったのだろう。帰りがけに石を投げて窓を割った。いたずら電話もかかってくる。陰湿な所だ。車のワイパーもへし折られていた。文学賞を取った事が関係しているのか。  

   翌朝アイラを乗せてビルギヘへ向かう。羊を手に入れるためだ。アイラの親戚の農家にお邪魔する。チャイをお呼ばれしお土産ももたせてくれた。新婚と誤解されたが二人は笑っている。アイラは歯科衛生学か会計学の勉強をしたいという。この日は羊は手に入らずじまいだった。ギョルジュクに向かう。森を抜け湖のほとりに出る。空はどんよりとしているが対岸の山の端はまだ明るく見え岸には明かりが二つ灯っている。二人はホテルに別々の部屋を取る。ウェディングドレスを着た花嫁が廊下を通り過ぎる。アイラは式場でダンスを見ている。ここに集う人たちの顔が現代トルコ人の顔だろう。翌朝アイラは湖畔に立ち朝霧が湖面を渡って来るのを見る。羊を手に入れて家に帰る。羊を捧げる儀式とは羊の首を切り生き血をユスフの額に塗る事だった。後はみんなで茹でて食べる。合理主義のユスフはやりたくなかったようだ。  

   アイラを送り一人原っぱで遠くを見つめているユスフ。突然猛犬が襲いかかりユスフを倒す。夜中目を覚ましたユスフは猛犬が吠えているのを聞く。ユスフを見張っているのか。朝まで寝ていたユスフは犬がいないのを見て立ち上がり原っぱを去る。これは夢なのか現実なのか。てんかん発作と夢の可能性もある。

   家に帰り一人朝食をとるユスフ。アイラが現れ卵を手渡す。映画はこれで終わり。

   トルコの田舎には自然があり、進学して都会に出る若者もいる。女性も社会進出できるようだ。その辺がテーマとして描かれている。ユスフは美人のギュルと結婚し都会で作家活動もして優雅に暮らしたかったのだろう。夢は実現せず今の状況はどん詰まりのようだが打開策はあるのだろうか。