プラトン ソクラテスの弁明、クリトン


   メレトスによる「ソクラテスは若者を堕落させるがゆえに、また国家の崇める神々を崇めずに別の新奇な神格を崇めるがゆえに不正を犯している。」という告発文を受けた裁判でソクラテスはこのように弁明した。

なぜこの人たちは証拠をあげて私を支持するのでしょうか。真実と正義のため以外に理由があるでしょうか。みんな、私が真実を言っており、メレトスが嘘つきだと知っているからなのです。

私は神々はいると信じており、私の告発者が信じているよりも、ずっと深く信じているのです。

  とはっきり容疑を否認しているが、ソクラテスは無罪の懇願はせず死も怖くないという口ぶりだった。死刑の宣告を受けた後、クリトンが逃亡を勧めても断りデロス島から船が帰ってくると死刑になった。毒ニンジンを食べるという方法だった。

  ソクラテスが弁論に長けているのはソクラテスの弁明、クリトンで十分わかる。それに名言も多く残しているようだ。道徳を説き最晩年にそれを実践してみせた人物だ。だが行われた裁判は思想で人を裁くという最悪のものだった。21世紀に至るまでこの黒いやり方は世界のどこかで連綿と続いている。