映画 激突 (1971)

    ドライバー目線の映像で始まるという面白い演出だ。主人公の車(直6 3.7Lセダン )はガレージを出て市街地、フリーウェイを抜けいつしか田舎道を行く。主人公は中年のセールスマンで仕事でカリフォルニアに行くところだ。山に囲まれた草原地帯をのんびり走っていると前に煙を吐きながら走る大型トレーラーが居る。この黒煙はディーゼル車の排気ガスのようだ。煙にむせたセールスマンは軽い気持ちでトレーラーを追い抜く。これが不条理劇の発端になる。このトレーラーが殺人トレーラーに変貌してセールスマンを追い詰めてゆくのである。このセールスマンは沈着冷静というわけでもなく少し軽薄なところもある。ドライブインまで11kmのところでトレーラーが突如煽り運転を始める。危険を感じたセールスマンは時速130kmで逃げてゆくがトレーラーは後ろからぶつけてくる。高速のままドライブインに突入し柵に当たって止まる。もうセールスマンは実存モードに入っている。自問自答しながら状況を理解しようとし店員にチーズサンドイッチを注文する。応対するのは日常モードの店員や地元の客だが主人公とは軽く噛み合わない。一人だけ浮いているという感じだ。 ドライブインを出ると待ち伏せしていたトレーラーが執拗に迫ってくる。有名な踏切、電話ボックスの場面があり殺す気満々であることがわかる。やがてセールスマンの車はラジエターホースの異常でオーバーヒートになる。上り坂でどんどんスピードが落ちてゆきトレーラーが迫ってくるがやっと峠を越え加速を始めた。このあとセールスマンの車がトレーラーを崖におびき寄せて自分の車もろともトレーラーを崖下に落とすという結末になる。小躍りして喜ぶセールスマンだがカリフォルニアの夕陽を見て何故か意気消沈するのである。闘争本能が出て相手をやっつけたけれどこの後が面倒なのだろうか。