映画 愛する時と死する時 (1958)

   冒頭の撤退シーンはソ連焦土作戦を思わせるものだがドイツ軍兵士のエルンストは休暇をもらい故郷の町に帰る。町は空襲で破壊されており家族は行方が分からなくなっていた。かかりつけ医を訪ねて見ると気の強そうな美人のエリザベートが居て父は収容所に入れられているという。何度か会う内に二人は恋に落ち婚姻届けを提出し同居を始めた。だが妻にゲシュタポからの出頭命令が来る。エルンストはユダヤ人の助けを借り妻を教会に匿おうとする。ユダヤ人が迫害にもめげず博愛的な事を言うのはさすがハリウッドと思う。娯楽映画に仕込まれたプロパガンダ。だが出頭命令は父の遺骨の受領の話だった。二人は民宿のような所を見つけ束の間のハネムーンを楽しむ。エルンストの休暇延長の願いは叶わず翌日出発という夜、連合軍が爆撃するが無事に朝を迎える。列車を見送るエリザベート。前線ではもはや戦闘は終わっており中隊は砲撃の中を撤退中だった。捕虜の監視を任されたエルンストは人道の立場から上官を殺して捕虜を逃してしまう。この反逆に対し軍法会議が待っているかと思ったら、逃したロシア人に撃たれてエルンストは倒れる。題名が死する時だからやはり死んだのだろう。幾重にも張り巡らされた宿命があると幸せには到達できない。ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟と同じだ。