山田太一 岸辺のアルバム (1977)

     小田急小田原線和泉多摩川の一戸建て住宅に暮らす中流家庭のストーリーだ。家のローンは終わっている。父の謙作は一流大出の商社の部長職で過労死寸前であるという。家庭を顧みない傾向もあるが気遣いもありそれ程問題にはなっていない。妻の則子は普通に家事をしながら縫製の内職をしているが現状にそれほど不満な訳では無い。姉の律子は上智大学の英文科の女子大生で大人ぶっているところがある。外国人講師が彼女のミニスカートを見て発情した場面が描かれる。弟の繁は高3の受験生で早慶には届かないレベルで友達とモスバーガーで遊んだり音楽を楽しみながら勉強している。会社、大学、高校と各自それぞれ活躍できる外界を持つが妻の則子にはそれが無い。不公平という意識は則子にはないがその潜在意識を呼び覚ます誘いの電話がかかってくるというのが第1話である。

   オープニングには多摩川が決壊した時のニュース映像と現在の多摩川べりに暮らす人々がジャニスイアンの音楽を背景に映し出される。シリアスでブラックな珍しいオープニングである。