山田太一 小さな駅で降りる (2000)

   問題提起型のドラマなので各所に破綻が見られている。

   食品卸会社が社内改革をするに当たって営業戦略部を立ち上げて各営業所の実態を調査し戦略を立てる。ところが部長を始め部下達は忙しい業務にヘトヘトになりその上各部署から反発を食らう。怨恨による暴力沙汰もあった。主人公の部長(中村雅俊)とその部下(堤真一)は二人とも美人の妻を持っている。だが会社優先の二人はそれぞれ夫婦仲がぎこちなくなっている。とにかく心に余裕がない。仕事ぶりを見ても余り有能ではなさそうに見える。 
   
    次の休日部長は白いクラウンに娘を乗せて海へドライブする。娘の悩みを聴くにしては変な演出だ。それで悩みとは学校の事ではなく自分の家族が不自然家族である事だという。

   会社に怪文書が出回り専務が怒っている。それには営業戦略部の裏事情と上層部批判が書かれていた。皆だんだん疑心暗鬼になる。 ところが怪文書を書いたのが部下の妻である事がわかる。 部長の妻も共犯だった。四人は顔を合わせ夜中に談判するがうろたえる男達に対し女達は仕事辞めて2年休みましょうと澄ました顔で言う。お互いの意見は相容れず話し合いは決裂した様だ。

   翌日しれっと出社した部長は偉そうに訓示を述べる。プロジェクトはスピードアップされる。家では又四者会談が開かれるが話は堂々巡りになる。翌日会議でもゴタゴタがあり取引先のスーパーも身売りになるという。社長は自分の節を曲げてまで問屋の改革に対応することはしないし今が売り時だという。世界一周旅行でも行こうかと言うけど妻がアルツハイマーになったと言う。話を聞いた部長らはしんみりする。    
  
    翌日妻達が社長を直撃する。社長に夫達の3ヶ月休職を申し出て怪文書の事も明かにする。専務も社長もカンカンに怒った。万事休した部長らは自ら退職を選ぶ事にする。   
 
     山陰の風景を見ながら四人と娘はのんびり鈍行電車に揺られている。最後に急行列車の通過を見送って途中の駅で降りて遊ぶ事にした。一同晴れ晴れとした様子だが何の保証も無しに実際やったらこうなるはずは無いと思う。