山田太一 ドラマ 奈良へ行くまで (1998)

    旧通産省のエリート平山が友人の妻に一目惚れし自分には妻子があるにもかかわらず電話で告白してしまう。この漱石ばりのドロドロがサブテーマで友人が仕事で悩んだ末、古い官公庁の受注システムを打ち破るというのがメインのテーマである。

   官公庁と建設業界の入札の裏側がかなり具体的に描かれる。エリート銀行員中本は美人の妻と一人息子がいるが仕事上の失敗から建設会社に出向させられていた。メフィストフェレスのような嘱託の男について官公庁周りをする日々だったが業界の癒着の構造を見るにつけ不満が鬱積してゆく。嘱託の男にそそのかされたのか70億の受注を単独で取るという考えに取り憑かれる。野望を実現する為に平山と妻を巻き込むことになる。   

     ある日中本は妻にブランデーを持たせて平山の家に差し向ける。ここは岸辺のアルバムの再現かと思ったら結局頼み込んだだけで平山が動いてくれることになる。内部情報と少しのアドバイスを中本に与えてあとは釘を刺しただけだ。  

    中本はアドバイス通りまず政治家に工作を開始する。不慣れな中本は嘱託に教わった段取りで動く。しかし実際にやってみるとなかなか難しい。さらに胡散臭い人物にコンタクトを取り中堅代議士と面会できるように手配してもらった。代議士は前向きに検討するが10日後に来てくれと言う。嘱託はこれでは遅いと言う。結局平山のルートで大物代議士に会うことができる。面会場所は秘密クラブで代議士は女装のメイク中だった。事情を聴く前に色々と説教のような自己弁護を聴かされる。だが若いのに見所ありと言われる。その意気に感じてプッシュしてくれるという。

     その後岡林建設の単独受注が決定しそれ程トラブルは起こらなかった。中本は面目を施し休暇をもらい3人で奈良旅行したという話。最後に中本夫婦と平山は唐招提寺の境内を歩きながら軽口を叩く。

      感想を書くとこのケースは絵空事っぽいが幾つかの真実も含まれているといったところか。