映画 近松物語 (1954)

  溝口健二監督作品 。近松門左衛門の「大経師昔暦」を元に書かれた川口松太郎の戯曲「おさん茂兵衛」の映画化。いわゆる心中物だが玉突きのように悲劇が生成する。

    京都の大経師屋の後妻に入った商家の娘おさんは実家からお金の用立てを頼まれる。これがそもそもの発端だ。お金にだらしない兄が悪い。すぐ癇癪を起こす旦那に頼み辛いおさんは手代の茂兵衛に打ち明けると気安く用立ててくれると言う。いつものやり方で短期の借金をしようと店の印板を私的に使おうとするが手代に見られてしまう。旦那はそれを知ると烈火のごとく怒るが茂兵衛は理由を言わないでいる。すぐおさんが打ち明ければ良かったのだが女中のお玉がしゃしゃり出て来て自分がお願いしたのだと言う。旦那は二人の関係を邪推してさらに怒り狂う。

   茂兵衛は納屋に監禁され沙汰を待つ身になるが抜け出して大阪に向かう。おさんもお玉と旦那の関係を知り家を出て行く。二人は町外れで遭遇するが心細いおさんを茂兵衛がエスコートする事になる。もうこれで捕らえられれば磔の刑になるのである。 

    茂兵衛は大阪で金策し為替を送った後琵琶湖で心中しようとする。いざ飛び込む段になって茂兵衛が以前からお慕い申し上げておりましたと言うとおさんが死にたくない一緒になりたいと言い出した。

  一方大経師屋ではお取り潰しを逃れようとお上より先に二人を見つけ出し引き離そうと躍起になっていた。だが暦の独占販売の利権が欲しい商売敵と組んだ手代が妨害してくる。結局二人は捕らえられ刑場に連れて行かれる。大経師屋はお取り潰しになった。