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新藤兼人 ひとり歩きの朝 (2002)

     新藤兼人監督が88歳を迎えた頃に書かれたエッセイ集。一読してこの老い方を追体験するのがいいなと思った。赤坂のマンションに家政婦をお願いして一人で住み、散歩しては自分の仕事をする。映像作家なので映画も見るし読書もする。まとめ上げたいシナリオにも挑戦する。孤独だが亡き妻の思い出とともに生きて行ける。

    TBSドラマ「ありがとう」第1シリーズではイチジク保育園の園長先生の妻役で乙羽信子が出てくる。園長先生が毎回タジタジになるくらい口うるさいけど朗らかな役どころだ。本当はもっと静かな人だろう。これを見ていると新藤兼人監督との生活が彷彿とさせられる。エッセイの中で新藤監督の女性観が述べられている。

    女は魔性を持っている、とか、女は男の魂を吸いとる、とかいわれたりするが、それは小説の世界であって、女は魔物でもないし吸血鬼でもない、かぎりない魅力を秘めたやさしい肌の人なのである。

   これは目から鱗だった。こういう事が言える人は珍しい。