映画 ストレイト・ストーリー (1999)

  今回もロードムービーだがアイオワ州ローレンスから兄の住むウィスコンシン州マウント・ザイオンまで560kmの道のりを主人公がトレーラー付きトラクターで旅をしたという実話である。デビッド・リンチ監督作品でカンヌ映画祭パルムドールを受賞している。

 

  主人公のストレイトは73歳で腰が悪く、視力も衰え、軽い肺気腫にもなっている。酒はやめているようだ。障害のある娘と二人暮らしである。妻を亡くしている。脳卒中で倒れた兄の元へ今回どうやって行くかが課題である。何とかたどり着いて仲直りしたい。

  結局320ドルで購入した中古のトラクターに乗り昼は移動し夜は小さいトレーラーに寝ることにする。娘も友人も呆れるが止めはしない。ソーセージとハムを買い込んでいざ出発する。平地を行く間は順調である。いろいろ楽しいエピソードがあった。だが問題は山間部である。パワーは非力だしブレーキも貧弱である。とうとう下り坂で暴走しファンベルトとギアボックスが壊れる。消火訓練中の人達に助けられ民家の裏庭でキャンプしながら修理が終わるのを待つ。修理代金はなんとか値切って180ドルにしてもらった。

 

  酒場で同年代の男と昔話をする。ストレイトはヨーロッパ戦線でドイツと戦ったらしい。復員後アル中 になるが牧師の助けにより禁酒できたという。だから今もミルクのようなドリンクを飲んで話している。 ミシシッピ川を越えウィスコンシン州に入る。墓地で野宿していると牧師が食べ物を持って話しかけてくる。兄と仲違いした理由はカインとアベルの話と同じであるとストレイトは言う。だが具体的には言及しなかった。翌朝出発したストレイトは村のバーに入りビールを注文する。今日から酒を解禁したらしい。店主に兄の家への行き方を教えてもらった。

  細い山道に入りエンジンが煙を出して壊れたと思ったら道を聞くために休んでいたようだ。地元の人がトラクターで通ると兄の家の場所を聞く。たどり着いたのは古いあばら家だった。ストレイトが大声で呼ぶと中から杖をついた兄が出てきた。
   
   米国の北西部は日本のように法規でがんじがらめでも無く人々には余裕があり何かあると手を差し伸べてくれる。ほのぼのとした展開だったが至る所に小さな毒を含んでいる。こう言うと語弊があるかもしれないがこの作品は名作イージーライダー狼たちの処刑台を合わせたような雰囲気がある。