BSドキュメンタリー 8月を待ちわびて(2014)

 ルーマニア北東部の都市バカウに住む一家のドキュメンタリー。生活と会話だけで構成されており特に解説は無い。だが絵柄を繰り返し見ていると背景が浮かび上がってくる。


  一家は母と子供七人から成る家族で集合住宅に住んでいる。電化製品は充実しており体制が崩壊するまでは安定した生活を送っていたらしい。母リリアナ、長女ジョルジアーナ、次女ラクラミオアーラ、三女アリス、長男イヌオット、次男ボグダン、三男ジョージ、四男ステリアンという家族構成だ。母から電話がかかってくる。小包を送ったという。母はイタリアで出稼ぎをしている。今日は仕事がなかったと言う。日雇いかもしれない。

  午前6時、朝の支度が始まる。長男と次女以外は学校に出かけて行った。明るく近代的な学校だ。ジョルジアーナの15才の誕生パーティーが開かれた。プレイルームのような所だがボグダンもステリアンも居る。みんな歌って踊って陽気である。冬のバカウは雪に閉ざされるが広場でみんなで遊んでいる。パソコンを使ってSkypeで母と子供達が話す。ジョージが叱られている。長女と次女は仲が悪い。

  トラブルが持ち上がる。シスターが下の三人を孤児院に入れるという。イヌオットはまだ18歳なのだ。母はSkypeで猛烈に反対するがジョルジアーナは今の生活に不満がありその方が荷が降りるという素振りも見える。

  長女が文法の勉強をしている。翌日は試験である。ジョージは接着剤を買うお金が無いと言う。お金を長男から貰った。長女は高校に行けるかどうか微妙な成績のようだ。弱気な長女を母が叱るようにアドバイスする。試験の結果は割と良かったようだが教育系の高校には行けない点数だった。母に電話で報告する。

  四男ステリアンは乳歯が抜けた。母が電話でステリアンと優しく会話している。三男ジョージと替わるがあまり長く話さなかった。ジョルジアーナが念入りにメイクをしている。お出かけである。行けないステリアンはメソメソ泣いている。夜の遊園地のようだ。カップルもいる。

夏になった。子供たちはバカウ国際空港に母を迎えに行く。出てきた母はまずステリアンにキスをする。その後はずっと抱っこである。一家はタクシーで家へ向かう。母はトリノに電話する。流暢なイタリア語だがどうやら仕事が無 くなったらしい。諸事破綻しつつあるという状況か。