映画 居酒屋兆治 (1983)

  これは山口瞳の同名小説を映画化したものなのだが驚くほどベタな筋書きが展開してゆく。主人公の名前は英治だがみんな兆治、兆治と呼んでいる。

  元高校球児の兆治(高倉健)は肩を痛めプロ野球を断念、←ベタ
大企業に勤めるが首を切る仕事が嫌だという実存的理由で退職し←ベタ
短期間の修行ののち居酒屋の主人になる。←安易
今は見合い結婚した妻(加藤登紀子)と店を二人で切り盛りし繁盛している。

   兆治には美人の彼女さよ(大原麗子)がいたが貧乏ゆえに話し合いの末別れ、さよは金持ちの牧場主と結婚する。だが精神的に不安定になり家出を繰り返し遂には牧場に放火して失踪する。 ←ちょっと不可解

  居酒屋の場面では常連客にサラリーマンの悲哀について語らせるが所詮サラリーマン賛美の話である。タクシー会社の副社長河原(伊丹十三)が市役所の職員に喧嘩を売るが兆治が代わりに殴られる。兆治とさよがサシで会う場面の背景にはサントリーオールドが二本写り込んでいる。あなたが悪いのよと言ってふっと消えたさよを追って雨の中を駆けてゆく兆治。と思ったらまた電話をかけてきて泣くさよ。

  居酒屋で河原が又激昂し兆治に暴力を振るう。河原がずいぶん悪者にされている。山口瞳は経営者と役人が大嫌いなのだろう。兆治は肩を壊した高校球児の相談にのる。自分の体験を話すが結局野球を断念したわけであまり参考にはならない。恩師の元校長が兆治の居酒屋に現れ若い後妻の話題になる。夜の生活のことを聞かれ照れながら話す。タクシー運転手秋本(小松政夫)の女房が突然死んでしまう。焼香にやって来た兆治夫婦。居酒屋で秋本を侮辱する河原のことが許せず兆治はボディブローをお見舞いする。その結果脾臓破裂となり兆治は留置場に拘留される。結局執行猶予だったらしい。

 

  兆治を会社から追い出した専務が癌で入院しているという。夜になると無言電話が兆治にかかってくる。兆治はさよだろうと目星をつけている。兆治は札幌にさよを探しに出かけるがちょうどその頃さよは肝臓をやられ吐血して倒れる。兆治は専務のところにもお見舞いに行く。たまたま手がかりを見つけてさよのアパートに向かう兆治。さよは兆治の写真を握りしめて息絶えていた。

  基本的に主人公は受け身で何もせず周りが自滅してゆくだけの物語だった。女性の描き方も今の感覚からすると時代遅れの感がある。