映画 にごりえ (1953)

  明治の東京を活写した樋口一葉の小説を映画にした作品。第一話の「十三夜」では女性を乗せ夜道を行く人力車が一軒の家に入る。おせきが実家に里帰りしたのだ。両親は喜んで迎え入れるが夫と子供がなぜか来ていない。しばらくするとおせきが泣き出し夫とは別れると言う。子供が出来てから女遊びが始まったらしい。両親は困惑する。

  話を聞いてみると教育が無いとか作法がなってないとか小言がひどいようだ。夫婦喧嘩のあと家を出たという。母親は憤慨するが父親はさもありなんという表情である。おせきに離縁するとこうなると説いて聞かせこれからも辛抱しろ、太郎の元へ帰れと諭した。そこへ弟が帰ってきた。車を呼んでおせきは帰って行った。

  ところがハプニングが起こる。乗ったはいいが車夫がストライキをして降りてくれという。仕事が嫌になったという。顔を見ると幼なじみの録之助だ。彼の不幸な身の上話を聞きおせきは今度は自分が乗らないという。二人は歩いて話をしながら帰って行く。なんと録之助はおせきの事をひそかに想っていたと告白する。このまま駆け落ちすれば近松門左衛門の「大経師昔暦」のような展開だがそうはならずいくばくかのお金を録之助に渡しておせきは帰って行った。

  第二話「つごもり」では奉公女中のみねが養父母の借金を返す為2円のお金を奉公家からくすねる事になる。いよいよ「大経師昔暦」かと思ったら放蕩息子の石之助のお陰で露見を免れる事ができた。石之助も掛けつづりから有り金全部くすねていたのである。

  第三話「にごりえ」は明治時代の銘酒屋菊乃井の遊女お力が落ちぶれた元布団屋の源七に付きまとわれ情死する話。若くて美人のお力は人気者だが勝手な行動に批判もある。ある日見た目も金払いもいい旦那が現れお力は積極的にアプローチするのだが向こうはお力の身の上話を聞き、ただ傍観するばかりである。そのうちに妻の悪口にブチ切れさらにストーカー度が増した源七がお力を殺して自害する。お力には抵抗した跡があった。

樋口一葉夏目漱石を差し置いて紙幣になっているがこれを見る限り近松の影響受けたゴシップ中心のストーリーテラーに過ぎないのではないだろうか。