映画 青春群像 (1953)

  イタリア映画が安心してみていられるのは二幕もののオペラの雰囲気を踏襲しているからだろう。ほど良い音楽が配され人物描写が濃密である。フェリーニ監督のこの作品もニノ・ロータの劇伴風の音楽があり主人公のファウスト、彼の妻になったサンドラの心の描写が主題になっている。 


  イタリアの田舎町での出来事である。グループのリーダー格であるファウストはサンドラと付き合っていたが彼女が妊娠したことを知りミラノに逃げようとする。それを父親が止め二人を結婚させる。サンドラはグループの一人モラルドの妹である。ファウストは無職だが父親が世話をして聖像を売る店で働くことになる。

  リッカルドは美声の持ち主だが無職である。アルベルトには美人の姉がいるが彼女は既婚男性と不倫の関係にありアルベルトを悲しませていた。アルベルトが忠告するが聞く耳を持たない。ある日の復活祭の宴会でアルベルトが泥酔して帰ると姉は男と駆け落ちすると言って出て行った。

ファウストは暫くは大人しく働いていたが店主の妻に手を出そうとして店をクビになる。その上モラルドに手伝わせ商品の聖像を盗み出して売ろうとする。結局誰も買ってくれなかったが全部バレてしまい父親が激怒、ファウストは勘当される。だがモラルドとサンドラの取りなしで事なきを得た。やがて男の子が生まれる。

  春がやってきて劇団の公演が始まった。グループの一人レオポルトは脚本家である。彼の念願がかなって座長のセルジョと面会する。レオポルトは脚本を気に入ってもらえてミラノに誘われる。だがセルジョはホモだったという落ちがある。一方女優の一人に目をつけたファウストは声をかけて落とそうとする。朝帰りするファウストをモラルドが見咎めるがファウストは冗談を言ってはぐらかす。翌朝サンドラは赤子と共に家出する。

  ファウストと仲間たちは車に乗りサンドラの行方を追う。警察が海岸を探していると聞いたファウストは驚き必死になって探すが手の打ちようがない。夜になってサンドラは戻っていたがファウスト父親にお仕置きを受ける。

  話はここまでで残りの仲間の行く末は観客の想像に任せると述べられた。ただ一人旅立っていったモラルドはフェリーニ自身だろうか。