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ETV特集 薬禍の歳月 〜サリドマイド事件・50年〜 (2015)

ドキュメンタリー

  サリドマイド薬害事件被害者の今を取材した群像ドキュメンタリーである。 

  Mさん 52歳女性 出産後両腕欠損と心臓の異常を認め東京の施設に送られる。7歳の時北海道の実家に帰る事になる。両親を初めて見たMさんは家族である事の気持ちを実感する。裁判で得た4000万円の和解金は父親が事業につぎ込んで失敗、夫婦は離婚した。Mさんは一時は絶望するが立ち直り、高校卒業後東京の企業に就職し自立する。26歳の時結婚を控え行方知らずの両親を探す。父は関東の病院で癌末期の病床にあった。父は喜んでくれた。母とも再会するが母も間もなく病気で入院する。その時に母の後悔の気持ちを聞く。母が詫びる姿を見ていろいろ考える。Mさんは今は公益財団法人いしづえの事務局長としても活動する。4年前乳がんの手術をした。

  Nさん 55歳女性 山口県生まれ。両腕、両足欠損で出生し家族と一緒に生活する。Nさんは幼少時の思い出を語る。小学校の入学が叶わず家で過ごすことになる。忙しい家庭の中で遠慮しつつ生活する。通信制の高校に入学し週一回の通学を楽しむようになる。

  Iさん 53歳男性 札幌市の乳児院の前に置かれているのが見つかる。生後一週間だった。Iさんはいつまでも両親が会いに来ないのを不審に思っていたが、事実を知らされたのは10歳の時だった。施設を転々とし親の事はいつか潰してやろうと思っている。和解については批判的だ。企業側の刑事罰がうやむやになったからである。和解金も貰っていない。一種の弱肉強食の哲学で生きてゆくが壁にぶち当たる事もある。

  Sさん 54歳女性 親指が一部欠損している。大手企業で働いている。6年前から異常が現れる。右の肩から腕が痛みで動かなくなった。その為に会社を退職する事になる。

厚生労働省は被害者の健康状況と生活状況を三年にわたり調査し結果を昨年公表した。頚椎癒合、無胆囊症など予想していなかった多彩な症状が認められた。

  Nさんは絵を趣味とし広告のイラストの仕事をしている。だが近年体がついて行かなくなる悩みが生じている。背中と腰の痛みが強くなってきている。40年前の和解確認書には新たに生じた障害についての取り決めがある。加害者側は真摯に取り組む義務がある。今年から二次障害の問題について国と被害者側は話し合いを始めた。

  一方ドイツには3000人のサリドマイド被害者がいる。両手両足に障害があるBさんは年々関節の痛みがひどくなり昔のように動けなくなった。だが二年前にドイツでは被害者の年金が月額最大94万円に増額された。Bさんは車椅子ごと乗れる車を購入する。ヘルパーを雇い旅行もできるようになった。こうなったのもハイデルベルグ大学の調査で二次障害の実態が明らかになりドイツ連邦議会が法改正に動き出したからである。

  日本でもこの変化を受けて活動が活発になる。Mさんは生まれ故郷の北海道旅行を計画する。高岡市のSさん(53歳)は腕のねじれと指の欠損、顔面麻痺がある。自分の出産経験を書き後世に残そうとする。これは「サリドマイド禍の人々」という本になり出版された。その時の子供は薬学部に進んだ。子供が帰省してSさんと対話する。Nさんは新たな女性像の絵を完成させる。

  I さんは三年前から人工透析の治療を受けている。隣町の病院まで車を運転して通っている。辛さが伝わってくるがこれについても太く短く生きてきた結果と受け止めているようだ。Mさんはフェリーに乗り苫小牧に着く。やはり自分で車を運転し伊達市に入る。実家のあった所に行ってみると牧場の名残が少しだけ残っていた。なつかしい杏の木もある。浜辺に立って昔を思い出す。このいつまでも止まない波の音は黒海トラブゾンを舞台とした映画のエンディングを思い出させた。