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 映画 イングリッシュ ・ペイシェント (1996)

  のどかなイタリアの廃墟となった村に大火傷を負って死にかかっている名無しの患者とカナダ人看護婦がやって来て終戦までの時を過ごす。何だか変わった状況だがここまでの経緯は複雑である。映画の冒頭に出てくるのは砂漠の上を優雅に飛行する複葉機、広がる風景には洞窟の壁画をモチーフとしたフォトジェニックな映像が重ね合わされている。何だろうと思っているとたちまち飛行機は撃墜され炎に包まれる。パイロットは地元民の手当を受けるがやがて連合国部隊に保護される。 部隊は先を急ぐので看護婦のハナと患者が古い修道院に残ったのである。

  ハナはキュートな美人だが親しくなった男が次々と被弾して死んでゆくというジンクスがある。この患者の男にハナが抱いている感情は不明だが男の昔の恋人がハナであるという暗示がいくつかある。男は顔が変わっており記憶喪失になっているので二人とも気づかないという設定とも考えられる。男の回想という形で過去のストーリーが辿られてゆく。

  男の名はアルマシー。ハンガリー出身の伯爵で英国地理学協会に所属し論文も発表している。カイロでの国際サンドクラブのパーティーに出席し会員のクリフトン伯爵夫妻と知り合う。伯爵夫人のキャサリンは気さくだがゴージャスな美人である。会員には裕福な者が多く自家用の飛行機を持ち込んでサハラ砂漠の上を飛行して楽しんでいる。ある日会員らは奥地探検に出かける。クリフトン伯爵は秘密任務の為探検に加わらなかったという伏線がある。アルマシーは独自の調査に基づいて泳ぐ人の洞窟を発見する。二人は親密になるが帰りにサンドストームに巻き込まれる。何とかカイロに帰り着いた二人は翌日から情事に耽る事になる。

  ハナと患者の男の静かな生活が続く。卵を持った謎の男が現れる。男はカラヴァッジョというカナダ人である。患者の事を聞きつけてやって来たのだが自分の親指が無いのはアルマシー伯爵の裏切りによるものだと考えており見つけ次第殺すつもりでいる。男は修道院の納屋に住み着いた。ハナが古いピアノでゴールドベルク変奏曲の主題を弾き始めるとそのピアノは危険だから弾くなと言いながらインド人のキップ少尉が現れる。少尉は爆弾処理班のチーフである。調査するとドイツ軍が仕掛けていた爆弾があった。キップは任務の為修道院の中庭に住み始める。

  患者は徐々に死に近づいてゆく。カラヴァッジョが詰め寄ると患者はついに自分の名前と過去を全て思い出す。不倫に気づいたクリフトン伯爵はキャサリンを乗せた飛行機でアルマシーに特攻をかけたのである。アルマシーは難を逃れたがクリフトンは即死しキャサリンは重傷を負った。キャサリンは結局死にアルマシーは彼女を乗せた飛行機諸共墜落してしまったのである。ドイツ軍に地図を渡したのもキャサリンを助けようとしたからだった。

  暗くてプライドが高いハンガリー人と進歩を好むイギリス人が個人的に付き合うとこうなるのだろう  か。この物語はほぼフィクションだがそういう風にも読み取れる。そういえばペルシャを放浪したヴァーンベーリもハンガリー人だった。