映画 日本の黒い夏ー冤罪 (2001)

  1994年6月の松本サリン事件の報道の過熱とその冤罪性について検証した映画である。地元の高校生が日テレ系の地方局を取材して真実に迫るという体裁を取る。取材を受けたのは報道部のチーフと数名のスタッフである。


  いくつかの要因があって河野氏が被害を被った訳だがこの映画によると一つはストーリーを作って事実をそれに合わせて行くという県警の見込み捜査であり、もう一つは裏をあまり取らず正確な報道をしないマスコミによるスクープ争いであると言う。確かにそういう構図はここだけではなく一般的にあると思う。だがこの局だけは捜査の方向性に疑問を呈する内容の特番を作り放映したのだという。また地元民による嘘の証言や河野家へのいたずら電話なども描かれている。マスコミの報道にも責任があると言うが正義感が強く過干渉な県民性があるのかもしれない。それが裏目に出たのだ。

  河野氏の受けた過酷な取り調べや重体となった妻の様子も描かれるが描写はメロドラマ風でありむしろ見ていてジーンときたのは河野氏の弁護士の言動である。対抗手段にマスコミを使うという判断をする場面がある。

  結局物的証拠が皆無な状況で河野氏の逮捕は見送られ翌年の3月に地下鉄サリン事件が起こったのである。サリンの出どころについてはオウムが作ったように仄めかされているが矛盾点の検証はされていない。