東洋文庫 沖縄の犯科帳 (1870年頃)

  琉球王国の裁判記録は戦禍で焼失してしまったがその一部が筆写されて残っていた。本書はそれの口語訳である。琉球王国には琉球科律、新集科律という刑法があり平等所(ひらしょ)という裁判所があった。

  川平(かびら)村配所の流刑人屋慶名(やけな)が大川村大浜屋女なびの家に差し火をした次第の問い付け

  問い付けとは調書のことである。なびは屋慶名の妾おもだを誘い渡唐船の乗組員に妾となるよう世話をする。これに腹を立てた屋慶名がなびの家に火を付けて衣類を盗み売りさばいたという行状である。屋慶名は犯行を認め恐れ入りましたと言う。判決は11年2ヶ月の流刑となった。

  放火事件のほか窃盗事件、姦通事件、殺傷事件、戸籍に関する事件などが収録されている。