映画 女ひとり大地を行く (1953)

  秋田の貧農一家に借金の取り立てが来る。返済のため父(宇野重吉)が炭鉱のタコ部屋に入る。夕張か釧路の炭鉱である。普通なら年頃の娘が借金のかたに売られてゆくのだがこの一家は男の子が二人である。さて炭鉱での労働は厳しく男気のある父は同僚の逃亡を扶けたかどでトロッコの刑に処されるがその日に炭鉱爆発が起こり生死が不明となる。子を連れて炭鉱にやって来た母(山田五十鈴)は父が死んだと聞かされ悲嘆にくれるが住み込みで働くよう取り計らって貰えた。

  やがて男の子二人は成長し兄は駆け落ちして都会に出る。弟は炭鉱で働き母を支えることになる。労働組合もでき労働環境も改善されてゆくが朝鮮動乱が起こると石炭増産の号令がかかる。事故が多発するようになると労働争議が起こり組合はストライキに入る。この時弟の喜代二は送電線を切断した容疑で逮捕される。これは経営側が仕組んだ罠だが兄の喜一が一枚噛んでいるのだった。その頃生きていた父がひっそりと炭鉱に帰って来て働いていた。結局弟の容疑は晴れ父との再会も果たす。だが病気の母は再会の日に息を引き取ったのだった。

  リアリズムとも言えないユニークなストーリーだがプロレタリア映画の様である。役者は劇団出身のプロを配している。実写場面は本物のロケなので当時を窺い知ることの出来る貴重な資料となっている。