東洋文庫 ライラとマジュヌーン (1181)

  ペルシアの詩人ニザーミーの作による悲恋の物語。王の命により作られたという。内容はアラビアのベドウィンの王族の娘ライラに恋したカイスが狂人(マジュヌーン)となって放浪する話である。語り口は口上の様であり詩のようでもある。一部を抜粋する。


  第27章 マジュヌーンの嘆き
  花の輿につきそう侍女の手に導かれて花嫁が降り立てば、その妖艶な姿は千人の画家が羨望するほどであった。だがその心には重い軛がかけられている。
  この結婚を知った時マジュヌーンは恋の苦悩よりさらに深い悲しみにうちひしがれながらも、絶望する心は恋人の後を追った。彼にすれば、胸に抱いた尊い妖精の像が砕け散ったのだ。

 

  第52章 後を追うマジュヌーン
  「ああ、世にありとあらゆるものを創りたまえる主よ、あなたに選ばれたすべてのものの名においてする私の最後の願い。苦しみに倦み疲れたわが魂を、この世の軛より解き放ちたまえ。わが魂を、恋する女の許に行かせたまえ。」
  こうべは地に伏せられた。両の腕はその下に恋人の眠る墓石を抱くように投げ出され、かすかにもれる言葉を最後に、マジュヌーンは息絶えた。「愛しい女。」

 

  全編こんな感じで延々と続いているのである。結局ライラは別の男に嫁いだのち後悔しながら死んでしまい悲報を聞いたマジュヌーンは悶え死にする。最後は宝塚歌劇の一場面と言っても違和感はない。