東洋文庫 加波山事件 民権派檄挙の記録 (1900)

  この本は明治17年の加波山事件の詳細を綴った私家版で著者は野島幾太郎という栃木在住の民間人である。加波山事件とは河野広体らが当時の藩閥政府、県令三島通庸を憎み国家転覆しようと計画し爆弾を製造したが未遂に終わった事件である。

  爆弾係の鯉沼九八郎が製造中に誤って爆発させ負傷したため計画が露見する。遂に決起した河野広体、富松正安らが爆弾150個を具足櫃に入れ夜間の筑波山周辺の地を彷徨う。鯨村の袖山藤三郎を訪れ、次に麓村の勝田盛一郎を訪れる。勝田氏の勧めで加波山に立て籠もることになる。一行16名は9月23日加波山に到着し革命の旗を掲げる。次いで檄文を発するが暗殺を実行する前に立て籠もったのはどうやら失敗のようだ。この檄文を民家や参詣客に配布し警察分署の襲撃を企てる。河野らの一隊が爆弾を投ずると署長以下3名は逃げ去ったという。その後一隊は桜井村の酒造家を襲撃して帰って行った。

  翌日は警察隊も参拝客もやって来ず山は深閑としていた。一行は下山し勝田氏宅を訪れると銃声がし警官隊が来襲した。一行は逃げ出し岩瀬の山林に潜み謀議を重ねるが結論がでない。加波山に立て籠もるか宇都宮で暗殺を実行するか割腹して果てるか何れの道も厳しいものがあり、ついに解散する事に決定したのである。その後各々は官憲に次々と逮捕された。

  以上が本書に書かれている事件の概略である。高校日本史の資料にも秩父事件の周辺事件としてさりげなく名前だけ出ているが実は爆弾を使った要人暗殺テロ未遂という日本史史上初の重要事件なのである。