東洋文庫 アラビアンナイト別巻 アラジンとアリババ (2)

  アラビアンナイトには定本がなくいくつかのアラビア語の写本があるだけでそれには282夜しかない。アラジンもアリババもシンドバッドも後世に付け加えられたものである。

 

アリババと四十人の盗賊たちの物語

  アリババには裕福な家の娘と結婚したカシムという兄がいるがアリババはというと普通の娘と結婚したのでだんだん生活が苦しくなっていった。そこでアリババは山で薪をとって生計を立てる事にした。わずかな現金収入を得て安定した生活を営んでいたアリババに幸運が訪れる。ある日のことアリババが山で木を切っていると盗賊の一団がやって来て洞窟の扉を開けて入って行くのを目撃する。その時の呪文を覚えておいたアリババは盗賊たちが去った後洞窟に入り財宝を見つけるのである。その日は金目のものを運べるだけ運んで帰って行った。

  驚いた妻はアリババから話を聞くとたいそう喜んで金貨がどのくらいあるか調べてから土に埋めて隠そうと考え、よせばいいのにカシムの家から枡を借りて来る。怪しんだカシムの妻は枡の底に蜜蝋を塗っていたのでそこに一枚の金貨が付いて返ってきた。カシムの妻は夜も眠れないほど妬んで悶々とする。その夜カシムにこの事を話すとカシムは自分もその財宝が欲しくなりアリババから呪文を聞き出して翌日山へ入って行った。洞窟の中に入りいざ帰ろうとすると開け胡麻という呪文が出てこない。とうとう盗賊に見つかってカシムはバラバラ死体にされる。翌日アリババが洞窟を見に行くと入口のところに兄のバラバラ死体を発見するのである。

  この後はアリババと智慧者の女奴隷マルジャーナが巧妙な隠蔽工作を行い、またアリババたちの命を奪おうとする盗賊の裏をかき壊滅させるまでのストーリーが展開する。皆さんも子供に読み聞かせた絵本でこのストーリーは十分承知しているのでは無いだろうか。訳文は前嶋信次氏によるもので最上質の読み心地を味わいながら読了できた。