映画 キングダム・オブ・ヘブン (2005)

  エルサレム王国(1099〜1291)を舞台にした歴史メロドラマである。フランスで鍛冶屋を営んでいた主人公のバリアンは妻子に死なれ自暴自棄になっていた。そこへエルサレム王国の騎士ゴッドフリーが旅の途中に訪れて自分はおまえの父であると告げる。バリアンは最初は同行を断ったが自身の罪を贖うため父とともにエルサレムへ向かう。

  旅の途中で父が負傷し病死する。バリアンは領地を受け継ぎエルサレムを守る騎士となる。エルサレムに着いてみるとそこは賑わいはあるがイスラム教徒、ユダヤ教徒キリスト教徒が混住し聖地とは程遠い混沌とした状況である。美青年のバリアンには絶世の美女シビラが言い寄ってきてラブロマンスが繰り広げられる。だが国王のボードゥアン4世が癩病を患った末病死し危機が到来する。いよいよサラディーンが大軍を率いて攻めてくるのだ。王に即位したギーはサラディーンにハッティンの会戦で敗れる。バリアンはエルサレムを死守するが激しい攻防の末エルサレムは陥落する。

  攻防の様子はリアルに描かれており派手で見応えがあるが考証は滅茶苦茶では無いだろうか。キリスト教徒の葬儀では美しい音楽が流れるがマタイ受難曲のコラールはやり過ぎである。この時代にしては領主の発言がややリベラルで、サラディーンも聡明でリベラルに描かれている。イスラム教徒、キリスト教徒が共に見る事を考慮してあるのだろう。或いは現代人の思想を登場人物に投影した軽い作品とも言える。十字軍の頃の戦闘の様子はロビンとマリアンがリアルっぽくて良かった。