苦海浄土全三部(2016)

昨年は石牟礼道子苦海浄土全三部を図書館で見かけて借り出し読んでみた。有明海で暮らす漁師達ののどかで活力に溢れ幸せだった頃の描写が純文学として成立するレベルである事に驚いた。いやちょっと現実はそこそこ厳しいものがありそこまで天国かなという疑問も生じたのであるが、彼らが地獄に叩き落とされてからの現状の乾いた描写と対比して見る効果も有るのだろう。二週間ではとても読みきれず短文にまとめる事も出来なかったが彼女の仕事はスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチのそれに匹敵するものだと確信した。

事件そのものは和解が成立したので裁判による真相の解明、責任の所在の追及は為されずに風化して行った。ドキュメンタリー作品ではみなまた日記 甦る魂を訪ねて (1996)というのを見た。枯れた感じの静かなドキュメンタリーだったが胎児性水俣病の人達がワークショップに登場する。まだ若い人たちである。