吉田秀和 名曲のたのしみ 2012年3月3日放送分

今日はラフマニノフの連続放送の16回目に当たりますからまず交響詩「死の島」作品29、これから聴きましょう。ラフマニノフは1907年パリにいた頃セーヌ川の河岸に露店がずっと出てましてね、これは今でも出てますけど、そこで版画を売ってた。その店でもってスイスの象徴主義の画家のアルノルト・ベックリンの作った死の島という題の版画を見たんですね。暗い糸杉の木立の後ろに古びた寺院の柱がありまして、その後ろに祭壇から立ち昇る煙、海から島に上がってくる階段などが描いてあります。神秘主義者がやるような幻想的な世界が浮かび上がっているんですけど。この絵を見たらラフマニノフはほとんど大きな感動的なショックを受けたという、これ本人の話です。そしてパリからのロシアに帰る道で原画のあるライプツィヒの美術館に寄ってその原画を見たくらい、それくらい打たれたんですね。その時の感動を音楽にしたというのが管弦楽のための交響詩「死の島」です。作曲は1909年の1月から3月にかけて前半イ短調の暗い部分と後半変ホ長調の生き生きとした部分との強烈な対照が根本になっています。作曲者は前半の方は死の世界、後半の方は生、生きる、命の世界と呼んでいたようです。この中にグレゴリアン聖歌のディエス・イレ、怒りの日の断片が引用されます。それじゃ、交響詩「死の島」作品29、これをスヴェトラーノフ指揮ロシア国立交響楽団の演奏で全曲続けて聴きましょう。〜音楽〜

今聴いたのは云々。今度はこの前に途中まで聴いてきた15の歌曲集作品26の第8曲から聴いていきましょう。第8曲目は「どうかお慈悲を」、第9曲「私はまた一人ぼっち」、第10曲目「私の窓辺に」この3曲をまず続けて聴きましょう。歌っているのはエリザベート・ゼーダーシュトレーム 、ピアノはヴラディーミル・アシュケナージ。〜音楽〜

今度はこの歌曲集の11曲目「噴水」、第12曲「夜は悲しい」、第13曲目「昨日私たちは出逢った」 この3曲。続けて聴きましょう。〜音楽〜

今度は第14曲目「指輪」、第15曲目「すべては過ぎて行く」これでこの歌曲集の全曲が終わります。〜音楽〜

今度はちょっと風変わりなんですけどラフマニノフがスタニラフスキーへの手紙を書いた。でその手紙を音楽にした。これはね、スタニラフスキーは当時のロシアの演出家で天才的な俳優でもあり演劇の理論家としても有名な人でした。革命が終わってソビエトでも活躍した人でしたね。彼はラフマニノフの親友の一人でそしてその人のお祝いのためにラフマニノフはそのパーティに行きたかったけど行かれなかったんで手紙を書いた。その手紙を歌にした。この手紙の全文を歌にしたもの。ちょっと風変わりだけど面白いでしょ。〜音楽〜

あのう、時間がまだあるので歌、続けましょう。歌曲集作品34、これは13曲あります。で、1912年ラフマニノフはある人から手紙をもらってその人は詩人でのちにラフマニノフが革命でロシアを離れるようになるまで文通が続くことになるんですけども。その詩人に、と言っても女の人ですけれども、歌曲を書くのに相応しい詩を推薦してほしいと頼んだら彼女がいろんな詩を送ってくれてそれがこれから僕たちが聴こうと思う歌曲集作品34の半分以上は彼女の推薦してきた詩だそうです。第1曲が「ミューズ」、次の歌「私たちの誰の心にも」この2曲を続けて聴きましょう。〜音楽〜

今日は今聴いた云々と云々を聴きました。じゃまた来週。さよなら。

名曲のたのしみ、お話は吉田秀和さんでした。