映画 天と地と (1990)

1990年の配給収入一位の映画である。配給収入は50億円とされているが企業による前売り券の大量購入の効果があるので実質的な数値は不明である。角川文庫の海音寺潮五郎の小説に基づいたストーリーとなっている。長尾景虎(後の上杉謙信)はじゃまな兄を討ち将軍家から越後守護代に任ぜられ任地とその隣国において謀反を抑える役割を担うことになる。神仏に帰依した景虎は俗世の楽しみを断ち戦いでは連戦連勝の勢いである。一方領地を拡大し上洛まで目論んでいる武田晴信(後の武田信玄)と景虎はいずれ激突する運命にあった。1561年ついに両者が激突、川中島の戦いが幕を開ける。

映像はイメージビデオを撮ったのかと思わせるほど耽美的である。音楽担当は小室哲哉氏で雅楽のモチーフを研究しそれなりに作り出した今風の音楽が奏でられる。音響にはこだわりがあり全編ハイファイステレオになっている。セリフは必要最小限になっていて人間味のある熱い対話は無い。土着の武士階級である長尾氏、武田氏ら登場人物がこんなに洗練されているのには違和感を感じる。戦いのシーンは相当な動員数を誇る豪華なものだがリアリティを追求したものではない。最後は謙信と信玄の一騎打ちになり信玄が負傷するが何故か上杉勢が兵を引いて行った。