映画 おもひでぽろぽろ (1991)

1991年配給収入一位、18億7000万となっている。原作の同名コミックは昭和色が色濃い、ちびまる子ちゃん風の連載漫画である。

主人公の岡島タエ子は東京都在住の11歳の少女である。厳格な父とクールな母、口うるさい姉が二人、祖母と一軒家に住んでいる。国語は得意だが分数の割り算と通過算に苦労している。大根と玉ねぎが苦手でいつも残してしまう。野球が得意な広田くんと噂になったことがあり満更でもないようである。この頃の女子は生理が始まる時期でもあり学校でそれについて教育を受ける。

エピソードとしておばあちゃんと熱海の温泉に一泊旅行したことがでてくる。中華料理を食べに家族で出かける時タチの悪い駄々をこねて父にビンタを喰らっている。またタエ子は学芸会の村の子の役で演技に工夫を凝らしたせいでN大の演劇部からスカウトがやって来た。有頂天になるタエ子だが夕食でこの話題が盛り上がった時父が芸能界は禁止すると言ってこの話は終了した。この時家族の中に足を引っ張る者が数名居たようである。

少女時代の部分はほとんど改変はなく原作そのままである。アニメのタエ子をもう少し不細工にすると原作の感じがつかめると思う。この後の部分は新たに付け加えられたものになる。

27歳になるタエ子はOLとして都心のオフィスで働いていた。10日間の有給休暇を取り寝台特急で山形へ旅立つ。最近お見合いを断ったということから自分探しの旅であるらしい。駅に着くとトシオという農業青年が車で迎えにきておりさっそく紅花摘みの現場に向かう。農家に寝泊まりして紅作りを手伝うのである。紅作りにそれほど思い入れがあるわけではないが都会人として心をリフレッシュするつもりなのだろう。有機農業について熱く語るトシオのことは眼中に無い様である。

息抜きにとトシオが蔵王高原のドライブに誘う。今度はネクタイをして垢抜けた服装でやってきた。手付かずの自然と里山の関係について薀蓄を傾けるトシオだが女性はそんな事に興味はない。だが明るく前向きなトシオに少しだけ好意を抱く。タエ子が東京に帰る段になっておばあさんがトシオの嫁にきてくれないかと言う。本音をぶつけられたタエ子は無言になる。家を飛び出したタエ子の頭の中で「農家の嫁になる!」という言葉がぐるぐる回っている。すると阿部くんという過去のトラウマが出てきた。貧乏で不潔な阿部くんのことを心の中で毛嫌いしたことである。トシオがお土産を持って車で迎えにきた。その後タエ子は何事もなかった様に東京へと帰って行くが途中電車を降りてトシオの元へ行くというエンディングになっている。

付け加えられた部分はトレンディドラマ風だがこの結末はバッドエンドである。贖罪の意味でときめきの無い相手と結婚したタエ子はこの後苦しむだろう。というかトシオが苦しめられる事になる。