映画 世界の中心で愛を叫ぶ (2004)

2004年興行収入一位、85億である。ベストセラー小説の映画化である。

冒頭のつかみがわかりにくいし不快さもある。回想によってストーリーがだんだん明らかになってくる。本筋は主人公の朔太郎と同級生の亜紀とのラブストーリーである。

美人でスポーツ万能の亜紀からアプローチして二人は公認カップルみたいになる。ここまでは月とスッポンという漫画と同じであるが後半から亜紀が白血病になり愛と死を見つめてというドラマのような展開になる。後はトレンディドラマの手法でまとめるとまあこの様な話が出来上がる。人の心の表層を追っただけのような浅さがあり若干劇的に見える演出もあるが心を抉る様な作用は起こらない。

ラジカセとウォークマンがアイテムとして活躍する。台風がストーリーのターニングポイントにやって来て影響を与えているが見ていてハラハラするほどでもない。町で写真館を経営する変わり者の重蔵(山崎務)が節目節目に登場して朔太郎に賢人の様なアドバイスをするが別に大したことは言っていない。

朔太郎と現在の恋人律子との関係も冷えているのか何だかわかりにくいものがある。高松の飛行場でやっと二人は会うが律子も嫉妬している様でもなく怒っているわけでもなくメソメソしているだけである。ごめんね朔ちゃんと言っていた。

最後にオーストラリアの実写映像が出てくる。朔太郎と律子は遺言どおり亜紀の遺灰を風に飛ばして終了する。何だか綺麗に完結した感じだが実際にこういうケースでは心の無念さは何をしても埋められないだろう。無明の闇を行くはずの朔太郎のその後の人生と冒頭の朔太郎の態度とどうしても繋がらないのである。