NNNドキュメンタリー ゆりかごから届く声〜赤ちゃんポスト(2018)

熊本市西区にある慈恵病院に赤ちゃんポストが開設されてまもなく11年になる。これまでに託された赤ちゃんは130人、理事長の蓮田太二氏は「赤ちゃんの命を守るという点では役目を果たしてきた。」と語る。2017年9月熊本市要保護児対策地域協議会がまとめた「こうのとりのゆりかご」第4期検証報告書が提出された。これによると半数近くが孤立出産であるという。又26人が未だに身元不明であるという。熊本大学特任教授三淵浩氏は出自の問題について「自分の生きている価値がないぐらい悩まれる人もいらっしゃいますから。」と語る。理事長は現実を見ると匿名性が大事と強調する。

病院は匿名での電話相談を行っている。相談内容を見ると不倫関係でできた子とか経済力の問題が多いようである。慈恵病院は病床数98床の内科、産婦人科がある病院である。入り口からこうのとりのゆりかごまでのアプローチと実際の預け方が紹介される。赤ちゃんポスト誕生のそもそものきっかけは2006年に県内で起こった赤ちゃんが放置され死亡した事件である。蓮田理事長はこの記事を見て自分は傍観者ではないかと涙し行動をおこす。ついに2007年5月に赤ちゃんポストが誕生する。

数年前赤ちゃんを託したという20代の女性にインタビューする。子供をどうしようどうしようと思っているうちに時間が伸びていって家族にも言えなかったという。結局自分で出産し一週間後赤ちゃんポストに入れたのである。障がい児、外国人、死んだ赤ちゃんが入れられる事もある。死んだ赤ちゃんを入れた親は逮捕された。子供の養育状況の内訳は特別養子縁組47人、里親26人、実親などの引き取り23人、施設28人、その他6人となっている。孤立出産の割合が増加傾向にあるという。蓮田健副院長と蓮田理事長は会見でこのことを受けて新たな戦略を提示する。匿名出産の制度化である。慈恵病院が24時間受け付けているSOS赤ちゃんとお母さんの相談窓口で昨年度受けた相談件数は7444件である。この電話相談から生まれた赤ちゃんがいる。

2017年2月副院長の蓮田健氏はハンブルグを訪れ保育園を視察する。保育園にはベビークラッペが設置されている。政府から認可を受けた相談機関が約1600か所あり実名で相談を受け匿名で出産できる。産まれた子は養子に出され16歳になると生みの親を知る権利が得られる。現在内密出産の数は300以上になる。ドイツ政府はベビークラッペを無くして内密出産に切り替えようとしている。2017年12月慈恵病院は会見を開きこの匿名出産の実現を目指す事を発表した。