映画 サード・パースン (2013)

ピューリツァー賞受賞作家で主人公のマイケルは自分を3人称にした日記を書いては作品の種にしていた。パリの高級ホテルに滞在し新作を書いているところである。何故かタイプライターを使っている。そこに作家志望でマイケルと2年越しの愛人関係にあるアンナがやってきて性的関係を持つのであるがマイケルは食傷気味、アンナも実は二股という状況である。

マイケルにとっては自分の息子を不注意から無くしたことが悔やんでも悔やみきれない失敗でありその事が創作にも影を落としている。たとえばある作品では仕事の電話に気を取られている間に娘を亡くした男が出張中のイタリアで出会ったロマ族の女に入れ込み女の言う通りに全財産をつぎ込むという状況が描かれる。男は気のいいアメリカ人で女の娘を救いたいと考えている。結局娘が救われたどうかはまだ結末を書けないでいる。

またある作品ではストレスから息子を殺そうとして親権を奪われた母親が弁護士を雇って息子との面会権を得ようとする。だが母親には問題があり約束の時間には来れないし仕事も長続きしないのである。とうとう面会権を得ることは出来なかったが冷酷かと思った元夫の温情で会う事が許される。こういう話ばかり書くので編集者に出版を断られるのである。とうとう編集者に君の作品は自分の人生の言い訳に過ぎないと言われてしまった。

アンナと別れたマイケルは意を決してアンナとの関係を小説に書いてしまおうと決意する。スラスラと筆が進み今度は出版オーケーという事になった。だが編集者はスキャンダルを自分から書いていいの?という顔をしている。最後の場面ではローマの広場のカフェで執筆していたマイケルが妻と電話していてそれを盗み聞きして真実を知ったアンナが走って逃げて行く。マイケルはアンナを追いかけるがいつの間にか小説の登場人物もマイケルを誘うように逃げて行く。そして着いたところは自分の息子が坐っている噴水広場だったというオチである。

最後の場面はマイケルが最近よく見る夢である。尚この映画は三つの話を同一時空で描くことによってどれが現実でどれが小説かわからないようにするという複雑な仕掛けになっている。