東洋文庫 王書(シャー・ナーメ) フィルドゥスィー著 (1010)

本書はペルシャの長編叙事詩でサーマン朝(873ー999)の時代に書き始められガズニ朝 (955ー1187)の時代に完成した。そのため著者のフィルドゥスィーが国王に献上した時に一悶着があった。ここに訳出されているのはその膨大な量の叙事詩の6巻分である。

ザールの巻

古代ペルシャのカーヤニー朝時代のお話。王であり名高い勇者のサームは男子の誕生を望んだが髪の毛の白い子が生まれて来た。困惑したサームは赤子を人も住まないエルブールズの山に捨ててしまう。そこにはスィームルグという鳥がいて赤子を雛と一緒に育ててくれた。激しく後悔したサームは夢のお告げを見て赤子を探しにやって来た。鳥は男の子にダスターンという名前を付け自分の羽を一枚持たせて王のところに届ける。王はとても喜び子にザールと名付け服を着せ町へ連れて帰った。王はザールに王位を譲りザールはザブリスターン(アフガニスタンの中央部を流れるヘルマンド川の西方地域)の王になる。

ある日ザールは思い立って勇士と連れ立ちインドの国を目指し旅立つ。各地で露営の陣を張り酒と楽師と竪琴を求め浮世の憂さを晴らす。カブールに着くとそこにはアラブ系のメヘラーブという王が居て豪華な貢物を持参しザールの元へやって来た。饗宴が開かれメヘラーブはザールの知識と思慮について賞でるとザールはメヘラーブの容貌を賞でる。メヘラーブの美しい娘ルーダーベについて聞かされるとその夜ザールは想像をたくましくするのである。メヘラーブが後宮にもどりルーダーベにザールのことを話すとルーダーベは羞みながらも恋心を燃やすのである。侍女を介してザールとルーダーベは想いを確かめ合う。いろいろあったが二人は目出度く結ばれる。二人の間に生まれたのが英雄ロスタムである。ロスタムの英雄譚については次のロスタムの巻に詳しく書かれている。