日曜洋画劇場 淀川長治解説 普通の人々 1986年5月18日放送分

はい皆さんこんばんは。今夜の作品は原名"Ordinary People"普通の人々、原名も邦題もおんなじですねえ。さあこの作品見事な内容を持ってますけれど、まず皆さんに申したい事はこの映画の監督がロバート・レッドフォードなんですよ。まあスティングがありますねえ、まあ愛と哀しみの果てがありますねえ、明日に向かって撃てがありますねえ、追憶がありますねえ、見事な俳優ですねえ。見事な俳優が自分で出ないで自分で監督したこれは作品ですね。しかも1980年のこの作品、この年にアカデミーの作品賞取りました、それから監督賞を取りました、それから脚本賞取りました。それから助演男優賞取りました。すごいね、一挙に4部門とったんですね。さあこの見事な普通の人々、この名作を今夜お贈りするのはこの日曜洋画劇場始まってなんと今夜は1000回に当たるんですね。これを記念致しましてテレビ局でどこもまだやってないこの名作を今夜皆さんにご紹介しましょうね。さあお父さんは弁護士、お母さんはいいお母さん、息子は17歳、いい家庭、普通の人々ですね。お父さんお母さんは結婚して21年目、息子は17歳、さあこの家庭にキャメラが寄って行きますとどんな中身か、どんな家庭か、お父さんはドナルド・サザーランドがやっております。お母さんはメアリー・タイラー・ムーアがやっております。いい舞台俳優ですよ。それから、息子はティモシー・ハットンがやっております。さあその家庭の中へキャメラが入って行きますと普通のいい家庭、いいパパ、いいママ、いい息子だのにこの3人の心配り、その家の中の神経、家庭の中身がだんだんだんだん怖くなってきますね。この17歳の息子の神経の使い方それも怖くなってきますね。というわけでこの映画は見ておりますと一つ一つが胸にささります。家庭の中の一つ一つがそうか、ああそうか、あれで、あれでいうことがどんどんどんどん私たちの胸に染み込んで参ります。そういう見事な地味な家庭の話をこのロバート・レッドフォードが監督したというところにもとっても面白い興味がありますねえ。これは1980年度の映画です。今夜はしっくりとしっくりと皆さんご覧なさいね。あとでまた会いましょうね。〜映画〜

はい。如何でしたか。あの朝ご飯食べるところでねえ、お母さんがあの息子にフレンチトーストだしますね。息子食べませんでした。そしたら、それを取り上げましたね。取り上げて、自分が食べるか、お父さんが食べるか或いは台所になおすか思うたらお母さんはそのまま冷たーく捨てましたね、全部、手をつけないで。きついね。あの辺りなんとも知れんお母さんのけつらて言うよりか、兄さんは好きだったけれどこの子はどうしてもいやだいう感じがあの一瞬で分かりますね。あの辺りの演出がいいですねえ。見事な監督のタッチですねえ。けれども後に今度は息子の方がお母さんに朝ご飯手伝いましょうかといったらお母さん要らないといいますね。ああいうことでこの家庭は本当にささくれ立って来るんですね。ほんの僅かなことでけれどもお母さんはいけませんねえ。兄さんが自分の上の息子が死んだということがずうーっと胸につかえてるんですねえ。さあそういう風に家庭というものがこんないささくれ立ってたら事件が起こりますね。ここで一番の問題はお母さんは悪い、お父さんももっとすぎにうたんといかない。いろいろありますけど実は、息子ですね。この17歳の息子がお母さんに嫌われてるとはっきり思って殻の中に閉じこもったことが私一番いけないと思います。もっとお母さんは理解してそうしてもっとお母さんとお父さんに明るく近寄ったほうが良かったと思いますねえ。はい、時間来ましたねえ。それでは次週の作品紹介致しましょう。〜Mr.レディMr.マダム2の予告〜

それでは次週をご期待ください、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。