JNNドキュメンタリー 子どもに忍び寄る”見えない紛争”の影 (2018)

ウクライナの首都キエフの独立広場の隅には遺影と花束が置かれている。2014年2月大規模な反政府デモが起こり親ロシア政権は崩壊する。これはそのときの犠牲者のものである。4月にはウクライナ東部で親ロシア派武装勢力が庁舎を占拠し独立を宣言する。これに対し政府はウクライナ軍を投入しついに武力衝突が起こった。

ユニセフウクライナ事務所のジョバンナ・バルべリス代表はこれは見えない紛争だと言う。何故そうなのか取材班はウクライナ東部へ向かう。国連安全管理担当者は言う。停戦違反が一日あたり35〜45回起きておりそれには戦車、多連装ロケット砲、大砲、地対空ミサイルが使われている。地雷も世界最悪レベルであるという。取材班は国連に協力してもらい防弾車で隊列を組みコンタクトライン(最前線)へ向かう。

マリンカ検問所を通過する。ウクライナ国境警備兵によるとここを一日に11000人、車2000台が通過すると言う。ここで取材する。ウクライナで年金をもらっている人がウクライナ東部にわざと住んで親ロシア派の年金を受給するという裏技があると言う。交通と社会インフラが機能している事が確認された。

取材班は防弾チョッキを装備してコンタクトラインの民家を訪れる。アンドレイ18歳が住んでいる。この家は5月に砲撃を受け父と弟は即死、母も死んでしまった。アンドレイは壊れた家を補修して住んでいる。この辺りには経済的事情で住むことを余儀なくされている人が多い。ウクライナ側にはコンタクトラインの5km圏内に19000人、15km圏内に5万人の子どもが住んでいる。ダルヤ17歳は戦争が始まった時の心境を語る。とても不安になり自分自身が無くなってしまった感じがしたと言う。無気力になったと言う。ユニセフは子ども達に発生するトラウマ、ストレス障害について警告を発している。学校で心理学セラピーも行なっている。

10km圏のバンドゥーラさん一家は当初は避難生活を送っていたが二年後に経済的理由から自宅で生活している。ソフィア6歳が菜園を見せてくれる。聞かれると将来は外科医になりたいと言う。心理学セラピストが語る。子どもにとっての問題は不安、集中力不足、イライラであると言う。生活の場を変えることもストレスであると言う。これらの実態から難民の発生が無いことの理由が判明した。

幼稚園では子ども達がお魚ごっこをしながら避難訓練をしている。1km圏内の学校では窓の外に土嚢を積見上げて授業を行なっている。壁はテープで色分けされそこが安全か安全でないかが示されている。地雷の特別授業も行われている。地雷危険教育スペシャリストのアリシャ・シバーさんは語る。子供は好奇心旺盛なため不発弾などの爆発物にやられやすいのだと言う。授業中にベルが鳴り子供達が向かったのは地下シェルターである。これは冷戦時に作ったものである。

ポパスナ第一学校には壁にブランコに乗る少女の大きな絵が書いてある。また国防教室では武器を陳列し国防について授業を行なっている。実は紛争前からこの教室はあったと言う。子供向けの軍事訓練キャンプ(ウクライナ2015年)の映像がある。突撃銃、手榴弾の扱いから白兵戦、応急処置についても学ぶ。子ども向けの愛国者クラブ(親ロシア派の映像)では女の子が格闘技、マシンガン、ガスマスクについて教わっている。愛国者クラブのおじさんはこれらは祖国愛教育であると言う。やる気満々か。