わたくしが旅から学んだ事 兼高かおる (2010)

兼高かおる世界の旅」はTBS系列で31年間続いた長寿番組で著者はその看板となる中心人物である。31年間世界を見て回っただけあって考えの行き着くところが明快である。本書には著者の受けた教育、仕事の流儀、人生と仕事について書かれている。

著者は日本の女学校を出た後ロサンゼルス市立大学に留学している。日本の女学校の居心地の悪さについて述べている。帰国後インタビュアーとして働くうちに80時間世界一周を試みて成功する。これによりラジオ局からインタビュー番組の仕事が舞い込んできてその流れで1959年から始まる「世界の旅」という番組に出演することになる。

番組の取材は著者とカメラマン、アシスタントの三人で行う。車で移動して目に付いたものを撮っては名前を記録する。このように「予定は未定」という手法で取材していった。こうすると取材される側もよそゆきで無くなるという利点がある。世界のセレブと会うときは着物を着用した。そういう時泊まるホテルは最高級で無くてはならない。相手を慮っての事である。

家族は母と兄ですでに二人とも亡くなっている。母と暮らしながら仕事に打ち込んだ人生だった。人生の最初の3分の1は勉強、次の3分の1は社会の為の仕事、最後の3分の1は自分の為に使うことを提唱している。世界を見ていると発展途上国では教育がままならず、先進国では引退が早いのを目の当たりにするからだろう。日本においては42歳で定年ではどうかと提唱している。趣味、芸事は早いうちに始めて置くことを提唱している。「日常生活から離れて心を休めた時、頭は働き出し、いいアイデアも生まれる。」と述べている。蓋し名言である。そのためには休暇は3週間が必要で、家は広い方が良いと述べている。