東洋文庫 薔薇園 サアディー 著 (1258)

この書はシラーズ出身の天才詩人サアディーが書いた散文と詩による道徳の教えである。読んで行くと商売上手なアラブ人の事を敵視しているのが窺える。

第3章 物語15

私はある砂漠のアラブ人がバスラの宝石商らの仲間に加わり、こう語っているのを見た。「砂漠に道を失い、旅の糧食は尽き、やむなく朽ち果てようと腹を決めた時、偶然真珠の填まった袋を見つけた。焙った小麦であろうと思った時の喜びと、真珠と知れた時の悲しみと落胆は全く忘れようにも忘れられぬ!」と。

乾いた砂漠の流砂のなか、
咽喉の乾いた者の口に真珠や真珠貝が何の役に立とう!
糧なく打ち倒れたものの腰紐に、
黄金や陶器片(ハザラ)が何の役に立とう!

第4章 物語9

私はかつて家を買おうか買うまいかと躊躇していたことがあった。ある猶太人がこう言った。「求めるがよろしい。私はこの界隈の家主である。どのような具合かその家の様子なら私に尋ねられるが良い。求めなさい。あの家には一点非の打ち所もないから!」と。私は述べて言った。「そなたが隣人である以外には・・・・・」と。

汝のような隣人をもつ家は、
十ディルハムの安値に値しよう!
しかし人は望むであろう、
汝がないのち千金に値するようにと!

第5章物語11

人々が博士(ウラマー)に問うて言った。「もし人が月とまごう美貌の(若者)と、衆目を避けて、同席し、戸を閉ざし、友だちが寝こんでしまった時、欲情が起こり、色情制するに由なく、アラブ人の言葉のように『棗椰子熟して番人が妨げない』時、自制心によって事なきを得ましょうや?」と。答えて曰く、「たとえ美貌の主について事なきを得ようと 到底誹謗者の誹りを免れることはできまい!」

人は自らの邪心の禍を免れることはできようが、
到底敵の悪意から免れることはできまい!

以下略