東洋文庫 則天武后 郭沫若 (1962)

郭沫若の書いた全4幕ものの史劇である。通説とは真逆を行くもののようである。以下概要を記す。

すでに権力を手にしていた則天武后は病弱な夫である高宗と第二子である太子賢と洛陽の宮殿に住んでいた。門閥を排し人材を登用し民衆の声を聞く政治を行っていた則天武后は旧勢力の反感を買い、また数多く行った粛清により恨みを持つ者も多くいた。この劇は則天武后を倒そうとする勢力とそれを阻止しようとする者達の権謀術数の物語であり最後に出し抜いたほうが勝つのである。

祖父を則天武后に殺された上官婉児は詩作の才能を買われ母とともに宮廷で暮らしている。太子賢は美人の上官婉児と懇ろになろうとするが断られる。則天武后専制に不満を持つ貴族達がやって来て太子賢を巻き込んで謀反を企てるがどうもいかがわしい連中である。則天武后を倒そうとする側であった太子賢はその後首謀者によって暗殺され替え玉が用意された。だが則天武后は揚州で挙兵した勢力と単于道から長安を経てやってくる反乱軍を討ち取り鎮圧に成功するのである。諜報力の差であった。皆んな上官婉児とその母に喋ってしまうので則天武后に筒抜けになってしまうのである。

則天武后は情報を得て直ちに勅令を発し敵の動きを封じる。官僚組織もしっかりしているのである。最後に関係者を全員尋問し味方になった者には寛大な裁きを行なった。このように有能で情に厚い政治家として描かれている。

本書にはもう一つ「筑」という戯曲が収録されている。