映画 風にそよぐ草 (2009)

ある日のパリでのショッピング風景で始まるのだが主人公の女性が専門店で靴を買った途端バッグのひったくりに遭遇する。靴を買わなければと後悔するのだが警察にも行かず諦める。一方主人公の初老の男性がショッピングセンターの駐車場で自分の車に乗ろうとするとタイヤのところに赤い財布が落ちていた。ちょっと変わったラブストーリーがここから始まる。パリ版の恋に落ちてである。音楽はシンクラビアで書かれたオリジナルの楽曲が挿入されている。

男性はジョルジュといい妻と独立した子供たちがいる。賃貸かもしれないが堂々たる一軒家に住んでいる。ジョルジュは直接届けようとも思ったが妻の言う通り警察に届けてこの件は忘れていた。連絡を受け署に現れたのはマルグリットという美人の歯科医で歳は行っているが警官も口説きの文句を発している。

後日マルグリットからジョルジュにお礼の電話があるのだが実は身分証明書からジョルジュはマルグリットの容姿を知っており近づきたいと思っていたのである。お礼の言葉をもらったジョルジュはどういたしましてとはならず、この時点からストーカーに変身する。夜中に電話したり、手紙を投函したり、挙句にはタイヤを引き裂いて置き手紙をする。マルグリットは警察に相談して告訴は望まないが説得する様に頼む。件の警官は同僚とジョルジュ氏宅を訪れてジョルジュにぐうの音も言わさず説得して帰って行った。

一件落着と思ったら今度はマルグリットがおかしくなる。異常者のジョルジュが忘れられず夜電話をすると外出中だというジョルジュに車を駆って映画館まで会いに行く。顔も知らないはずだがすぐジョルジュを見つける。映画は朝鮮戦争を題材とした「トコリの橋」だったがコーヒー店で話す内ジョルジュが怒って帰ってしまった。いよいよマルグリットはおかしくなり仕事をすっぽかしてぼんやりしていると同僚のべロッチがメガーヌに乗ってやって来て彼女を連れ出す。二人で遅いランチを摂っているとジョルジュが歩いていたのでべロッチが声をかける。

元の日常に戻ったマルグリットだが仕事に身が入らなくなり患者をほっぽり出して帰ってしまった。夜中に飛行場まで車を走らせると整備されたスピットファイヤが格納庫に眠っていた。マルグリットは翌朝遊覧飛行用の機で客を乗せていた。ジョルジュ夫妻はべロッチの車に乗り飛行場へと向かいジョルジュの操縦する飛行機に乗る事になる。何とも不思議な関係だが何とも不思議な結末がこの後待っていた。

紳士ではないが成熟しているパリ市民。周りの目にとらわれず好きな様に生きて人生を謳歌する人たちの様子が映画から伺えた。