映画 アメリカ アメリカ (1963)

オスマン帝国統治下のアナトリア中部の村が舞台である。エルジェス山が見える場所であることからカイセリ周辺と思われるが実際の撮影はギリシャの村で行われた。そこに元々住んで居たギリシャ人とアルメニア人はトルコ人に行政と警察権を奪われ農業や商売で暮らしていた。それぞれのコミュニティはキリスト教の信仰を守っており自分たちの教会を持っている。主人公の青年スタヴロスはある日アルメニア人の友人バルタンと山で氷を取り市場で売ろうと山から下りるところをトルコの守備隊に捕まり因縁をつけられる。だがバルタンが隊長と昔親しかったことからすぐ解放された。前日首都でアルメニア人が蜂起して銀行が襲撃されるという事件が起こっていた。スタヴロスが村に戻ると直後にアルメニア人の教会が焼き討ちされバルタンは死んでしまった。この時からスタヴロスはアメリカに行きたいと念ずるようになった。

スタヴロスの一家は裕福であったがだんだんと没落しておりとうとう父が決断する。スタヴロスに一家の財産を託してイスタンブールに出すことにした。スタヴロスは宝飾類と現金、織物を持たされ、ロバを連れて旅立った。追い剥ぎや詐欺師だらけの道中でまだボンボンのスタヴロスは身ぐるみ剥がされた上トルコ人を一人殺してなんとかイスタンブールの叔父の店にたどり着く。現金を持ってこなかったスタヴロスに叔父は激怒するが叔父の態度にスタヴロスも激怒し店を飛び出して港湾で苦力の仕事をする。目標はアメリカまでの船賃110トルコリラである。7トルコリラ貯まったところでお金を娼婦に盗まれてしまう。失意のどん底反政府運動の仲間に入ったスタヴロスは集会所を警察に襲撃され怪我を負うがなんとか助かった。

スタヴロスは方針を転換する。叔父の勧めで裕福な商人の娘と結婚しその持参金で渡米するという計画である。うまく話は進み商人の娘と結婚したスタヴロスは義父の商売を手伝ううちにアメリカ人の顧客と親しくなり夫人と関係を持つようになる。ついに切符を手にしたスタヴロスはアルメニア人で同じ志を持つホハネスらと同じ船に乗り込む。ホハネスら8名はアメリカでの二年間の無償労働と引き換えに旅費と身元保証を得るという。スタヴロスは同乗していたアメリカ人顧客に暴力をふるった事から上陸後強制送還される見込みが濃厚となる。一方ホハネスは過労がたたって咳が止まらなくなっていた。こちらも検疫で引っかかり強制送還されそうである。上陸直前ホハネスが身を投げ海に消えた。

死んだのはスタヴロスでこの男がホハネスだと偽り手配師は8名の労働力を確保し、スタヴロスは無事上陸に成功したのである。スタヴロスはジョー・アーネスという名前に変え靴磨きとなった。そして成功して金持ちになりトルコにいる一家を呼び寄せたのである。

監督のエリア・カザンカイセリ出身だが少年の時一家で渡米して絨毯販売で成功したとあるのでこれは監督自身の話ではない。