東洋文庫 新猿楽記 (2)

著者の雅楽についての博識ぶりを示す章がある。

[28] 九郎ノ小童ハ、雅楽寮ノ人ノ養子タリ。高麗、大唐、新羅、大和ノ舞楽、尽ク習ヒ畢ンヌ。生年十五ニシテ、既ニ此ノ道ニ達セリ。笙・篳篥・簫・笛・太鼓・鞨鼓・壱・腰鼓・フリ鼓・摺鼓・鉦鼓・銅鈸子等ノ上手ナリ。調子ヲ言ヘバ、雙調・平調・盤渉調・黄鐘調・大食調・壱越調・上調子等ナリ。舞ハ陵王・散手・延喜楽・皇麞・甘州・万歳楽・想夫恋・青海波・壱徳塩・安楽塩・蘇合・狛鉾・弄槍・五常楽・地久・納曾利・埴破・覩曾・胡飲酒・崑崙八仙等ナリ。凡ソ百廿条、尽ク以テ学ビ畢ンヌ。其ノ姿美麗ニシテ、衆人愛敬ス。其ノ貌端正ニシテ、見ル者歓喜ス。中ニ就クニ、叡岳ノ諸僧・辺山ノ行侶、コレヲ見コレヲ聞キテ、或イハ目ヲ迷シ着裳ヲ飛バシ、或イハ肝ヲ砕キテ紙衣ヲ振フト云々。

これについては教訓抄に基づく註釈がなされている。雅楽はこのころ完成の域に達しその後戦乱により散逸して行く。今は宮内庁式部職楽部として保持、存続している。You Tubeでまず平調 越殿楽舞楽 陵王を聴いてみた。