ロバート・A・ハインライン 夏への扉 (1956)

SFの名作中の名作と言われている夏への扉を読む。

あらすじ

主人公の技術者ダンは共同経営者のマイルズに婚約者と会社を奪われ、途方に暮れながら酒場で飼い猫と呑んだくれているとある考えがひらめいた。自分と猫を冷凍睡眠してもらい30年後の世界で目覚めるというものだ。そうすると自分を裏切った婚約者ベルがババアになっており若々しいダンを見て悔しがるというまあ姑息な仕返しである。

紆余曲折があってダンは30年後のロサンゼルスで目覚めるが猫のピートはいない上に一文無しで放り出されるという状況になる。そこからダンは半年間奮闘しふとした事から知り得た軍事機密のタイムマシンで31年前に戻ってありとあらゆる工作をする。新しい機械を発明し特許を取得し会社も設立する。マイルズの血の繋がりのない連れ子リッキーと婚約しピートとともに再び冷凍睡眠に入り2001年に舞い戻る。

これで不可解だったアラジン自動工業株式会社と自分名義の特許の謎が氷解することになる。そして21歳になったリッキーが冷凍睡眠から覚めてダンとピートと再会してこの話は終わる。

いかにも怪しげな会社ミュチュアル生命の冷凍睡眠保険が登場したり、勿体ぶった担当者と主人公がやりあう場面は安部公房の作品を彷彿とさせるが語り口がやや平易でありシュールな笑いが込み上げてくるほどでは無かった。そもそも正統派SFなのでこれは仕方がないか。