映画 グラン・トリノ (2008)

本作はクリント・イーストウッド最後の主演とされる作品で名作と言えるものである。今回のクリント・イーストウッドの映画は大人のペーソスとダンディズムのミックスと規定される。何故ならこの年ではもう大人の夢は描けないからである。

ミシガン州に住む中産階級の白人とアジア人移民の対立と交流がテーマとなっている。元々ドキュメンタリーで扱うべきテーマだが、わざわざ映画として構成した苦労は偲ばれる。

本作では引退した元自動車工のコワルスキー(クリント・イーストウッド)が、隣に引っ越して来たモン族の家族と小さなトラブルを起こすが、次第に仲良くなり最後は敵討ちまで代行するという濃密な関係にまで発展する。これはコワルスキーという特異な人物が存在しないと成り立たないストーリーである。もしドキュメンタリーだったら、偏狭なコワルスキーがヘイトを発揮して、悲惨で出口のない現実が展開するような気がするのである。

物語が全部終わって、グラン・トリノが穏やかにミシガン湖畔を快走するシーンが映し出される。見方によってはこれがお約束の大人の夢になっているかもしれない。