失われた時を求めて (23)

第3巻に入る。元外交官のノルポワ侯爵がわが家の晩餐に招待され交流を深めて行く。ノルポワ氏はプルーストに当代一の女優ラ・ベルマの劇を観る事が人生にプラスになるとアドバイスする。かくしてプルーストは祖母とともに「フェードル」を観に行くのであった。ここからプルーストのメスがサクッと入り、ラ・ベルマはバラバラにされる。バラバラにされたあと再構成されるのである。

ノルポワ氏はプルーストが文学の道へ進むことを称賛し、紹介先へ渡す一枚の名刺と、相続した遺産の投資先についてのアドバイスをくれた後、プルーストがコンブレーで書いた散文詩を見て押し黙るのだった。気まずい時間がしばし流れるが、ノルポワ氏はフランソワーズの牛肉のゼリー寄せを褒めちぎり、その後は随分長く会話を楽しんで帰っていった。特に英、仏、露の外交交渉の話に熱弁をふるうのであった。プルーストは氏に一目置いているのか、決してメスを入れてバラバラにしたりはしない。氏は人文科学アカデミーの会員でもあるのだ。ところで氏は昨日スワン夫人の晩餐会に出席していてその様子を詳しく話し始めるのである。プルーストが聞き耳を立てたのは言うまでもない。