カンガルーノート (2)

次にシュールな笑いが込み上げてくるのは、地下運河をフェリーで行く主人公のベッド上での事である。点滴袋がいつの間にか雄の烏賊に代わっており、迫り来る雌の烏賊と合体し烏賊爆弾となり老舗デパートを爆破するという状況になる。事情は父の遺品にあった小説ですでに知っており、何で今こうなるの?という理不尽さがなかなか面白い。主人公はとりあえず必死にこの状況を逃れようとする。間一髪の所でデパートの地下入り口にたどり着いた。

話は戻るが地下運河に到着した時の情景がピンクフロイドの『鬱』に似ているという事で、突如音楽談義が始まるがその部分を紹介する。

《波のうねりがしだいに幅を狭めてきた。船だろうか?櫓を漕ぐひそかなきしみ、船縁をたたく水の音。まるっきりピンクフロイドの『鬱』の出だしとそっくりじゃないか。バンド内の紛争でロジャー・ウォーターズが抜けた後、87年に制作された新グループによる作品だ。ぼくは以前から髭を剃った馬みたいなウォーターズのファンだったから、多少の偏見はあったかもしれない。でも出だしの音色には、昔の雰囲気が色濃くにじんでいて、悪くない。いずれ家に戻る機会にめぐまれれば、あらためて全曲を聞き直してみたいものだ。》

昔この文を読んでこのアルバムを買ったが、今また聴いてみる。終わりの何曲かは耳に残る感じだ。ジャケットが自動運転ベッドっぽい不気味な味を出している。