失われた時を求めて (114)

この二つの結婚について当人たちに起こった変化、社交界に巻き起こった噂話について得々と語るプルーストだが、そもそも過去の登場人物の縁がこのようにぴったり結ばれるものだろうか。小説の結末において作者がバタバタと行なった作為のように見える。シャルリュス氏の結婚観についての文章を紹介する。以下引用文。(吉川一義訳)

《男爵はカンブルメールの両親を嫌っていたが、その名前は気に入った。それがブルターニュの四つの男爵領のひとつだと知っていて、自分の養女には願ってもないことに、その地方では揺るぎない姻戚関係を持ち、尊敬されている由緒ある名前だったからである。王子に嫁がせるなど無理な相談だし、第一、望ましくない、これくらいが申し分のないところだ。》

第十二巻の締めくくりに突如としてロベールの男色趣味の詳述がでてくる。エメの証言や状況証拠を次々と挙げてゆき、揺るぎない結論に達するがこれも取って付けたような話である。この巻の後半は文章力が散漫であり、ストーリーがかなり破綻している。それにしても長かった。

 

図書館の臨時休館が約一ヶ月続くため第13巻と14巻については購入することにした。失われた時を求めては翻訳するのに10年、読むのには半年くらいかかると思った方が良い。僕の場合は東洋文庫28冊分だと思って読んだので、できないはずはないと思いつつ読んでいたのである。

 

f:id:hohon77:20200509053331j:image